自分で収入を得られるようになったことで、将来のために貯金をしようといった地道な目標もできました。
――ご自身の経験を踏まえて、精神疾患に悩む若者やそのご家族にどのようなことを伝えたいですか?
精神疾患にかかると「とにかく早く治したい」と焦ってしまいがちですが、治療が長期間に及ぶことも少なくありません。長い闘いになることは覚悟しておいたほうがいい。焦らないこと、そして腰を据えて「きっとよくなる」「必ず元気になる」と信じて、あきらめずに治療に取り組むことが大切です。
本人は自分なりに病気と闘っているんですよね。何とかしなければならないと思っているんだけれど、自分一人の力ではどうにもできなくて、それが反抗的な態度になってしまうんです。だから家族など近くにいる人は、本人の葛藤をわかってあげてほしいと思います。
また、家族は本人の将来を心配するあまり「中学や高校は絶対行かなきゃダメ」とか、「大学に進学するのは当たり前」などと押し付けてしまいがちです。でも精神疾患によって日常生活にはリスクが生じているときに、そんなことを言われたら、さらに負担がかかってしまうことになる。
近くにいるからこそ本人の話にじっくり耳を傾けて、どういう形で社会とつながっていくのがよいのかを一緒に考えてほしい。形にこだわることなく、無理のない方法を選んでほしいと思います。あきらめなければならないこともあるけど、いろいろな道がありますから。
また僕自身はかなりこじらせてしまったのですが、早く症状に気づいて適切な治療を始めれば、回復も早い。でも具合が悪くても、なかなか精神疾患と結びつけることができません。特に中学生など若い世代では、気づけないんですよね。
本人はもちろん、親でも先生でも友だちでも誰かに精神疾患の知識があれば、ちょっとした変化でも気づき、受診につなげることができるのではないでしょうか。一人でも多くの人に精神疾患について知ってほしいと思っています。
前編(中学生で統合失調症を発症「計算ができない」「暴言を吐く」「死にたい」今振り返る当時の僕)はこちら
https://dot.asahi.com/dot/2021041300073.html
(文・熊谷わこ)