放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、テレビの仕事について思うことをつづります。
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下北沢本多劇場で「てれびのおばけ」という舞台をやっています。僕が作演出で、主演の二人に今田耕司さんとせいやさん(霜降り明星)
物語はテレビ局が舞台で、今田さん演じる葉月(はづき)というテレビマンが、50過ぎてずっとやってきたバラエティーの現場から、ワイドショーを作る情報に移動してきて、戸惑う毎日。今までバラエティーを作ってきて人とのつながりを大事にしてきた葉月からすると、知り合いだとしても事件を起こしたら取り上げなければいけないワイドショーのやり方に疑問を感じている。すると、その葉月の家にお化けが出てくる。瓦田(かわらだ)という名前のお化けは実は80年代にバリバリのバラエティーを作っていたテレビマンで、今のテレビの作り方に唖然としていくというスタート。
僕がテレビの仕事をしてきて、そして今感じることをリアルな描写を含めながら書いているのですが、あらためて脚本を書いていてバラエティーでできなくなったこと増えたよなと思うんです。
80年代、「ザ・ベストテン」では、アイドルが仕事終わりで新幹線のホームに駆け付け、新幹線に乗り新幹線の中で歌うと、途中で切れてしまう、なんてものがあり、ドキドキしながら見ていました。
今は絶対にできません。まず、電車のホームで生でバラエティーの中継はできないだろうし、駆け込み乗車だし、なにより、一般のお客さんの顔が出まくっている。この5年だろうか、テレビで通り過ぎる一般人の顔にボカシをかけるようになったのは。
実は数年前、僕が構成を手掛ける生放送の番組で、街中をデートしていた男女が不倫のカップルで、それが映ってしまっていた。なんと、そのカップルが番組に連絡してきて、不倫なのに映ってしまったことにクレームを入れている。いや、不倫してる方が悪いだろと思うんだけど、文句を言われたら番組は弱い。今後リピート放送する時には、ボカシをかけることになった。