小説を書き始めた頃は、「ジャニーズの作家と思われたくないから、あえてジャニーズっぽくない作品を書こう」という気持ちもあったんです(笑)。でも10年近く作家活動をしていると、ファンの方も僕を信頼してくれているとわかるようになったし、「ジャニーズで学んできたことを作家として生かしていってもいいのではないか」と自然と思うようになりました。僕が書いたら、それはどうやっても僕の作品になる。もちろん、一つ一つの文章は練っているけれど、エゴのようなものはなくて、「若い頃にこんな作品に出合えたら楽しいだろうな」という感覚を大切にしていきたい、と。
■ギアを上げていく
加藤:賞をいただいて改めて思うのは、ここからがスタートだ、ということ。受賞はもちろんうれしいですが、この賞を背負った以上、次の作品からはもう一つギアを上げていかなければいけない。これまでは、どこかに自分のテリトリーで書き続けられたらそれでいいのかな、という気持ちもありました。これからは文学的な面白さから逃げてはいけない、もう甘えられないな、と思いますね。
——『オルタネート』単行本化にあたり、校了日の前日まで原稿に直しを入れていた。編集者や校閲担当の指摘は素直に受け入れて、作品をつくりあげた。
加藤:僕、文章を直すのが得意なんですよ。「書く」より「直す」方が才能はあると思う。これは自信を持って言える(笑)。いつも初稿は「長い下書きです」と言って編集者に渡しています。もっと直してから原稿を出せればいいと思うのですが、「自分はこの程度の筆力です」というのを最初に見ていただいて、意見をもらうようにしています。若い頃は特に「カッコつけても仕方がないな」という気持ちもあって。いまは編集者も同年代や年下の方も多いのですが、僕は人の意見を基本的には否定しないので。とはいえ、指摘や提案にただ従うだけでなく自分の言葉にしたいので、「では、ブロックごと変えます」と、文章を丸ごと作り直すことはあります。