収録日が近づいてくると、「キャバクラ漫談」のネタとして使えそうな話はあるのか、過去を色々と思い出しながら、スマホにメモしたりして、エピソードをまとめている。
正直、こんなこと、これまでの芸人生活では一度もやったことはない。
いったい、どういうものがオチとして使えるのか、フリって何なのかとか、細かいテクニックがボクにはいまいち分からないからね。
前日は、当然緊張で、よく眠れないし、いつも吐きそうになる。
移動中の新幹線の中でも、ずーっとブツブツつぶやいて、トークの練習をしている。
新大阪駅に着いた後も、本来であればタクシーでテレビ局に向かうけど、ボクは練習する時間がとにかく欲しいから、1時間ほどかけて、歩いて、局まで向かっている。
もちろん、雨の日でもね。
ブツブツ言いながら、テレビ局が近づいてくると、大きな橋が見えてくるんだけど、「あーこの橋を超えるともうすぐだ…」って、一気に緊張が高まる。
まだ楽屋の準備もできていないのに、入り時間の2時間も前にテレビ局について、スタッフさんに迷惑かけちゃったことも何度かあった。
収録直前になっても、まだ廊下でずっとブツブツ言っているから、さんま師匠に「あんまり練習しすぎたらあかんで(笑)」って軽く注意されたこともある。
たしかに、やりすぎたせいなのか、一度「大オチ」をド忘れしたこともあるよ(笑)。あれは、ほんとうに焦った…。
収録中は迷惑をかけてしまうことばかりだけど、さんま師匠はどんなにボクが滑っても決して怒らない。
他の芸人さんの中では「目が怖い」「目が笑ってない」なんて言う人もいるけど、ボクは感じたことはない。ギスギスした感じも全然ないんだ。
収録終わりに楽屋に行っても「クロちゃん、フリは短くやで」ってアドバイスもしてくれるし、「おもろかったで」って優しく声もかけてくれる。
正直、収録現場の雰囲気は、毎回やりやすいなって思っている。
それでも緊張するのは、単純にボクのトークスキルがついていけてないだけ(笑)。
うまく喋れた時に、「クロちゃん!R-1、優勝――――!」って、さんま師匠が爆笑してくれた時は、ほんとうに嬉しかったなー。あの時は、「こんなボクでも、トークスキルがついてきたかもしれない!」って変に勘違いした(笑)。後日、別の番組で喋ったら、全然駄目だったよ。トークって難しいね…。
練習したって、うまくいく保証はないけど、だからといって何もせずにいるなんて、ボクには無理だから、番組に呼ばれるかぎりは、ブツブツつぶやくルーティーンは続けていこうと思っている。
ボクは絶対お笑い怪獣にはなれないな(笑)。
こんなボクにも、こういう「喋る」場所を与えてもらって、ほんとうに感謝。
さんま師匠がまた笑ってくれるように、次回も頑張るしん!
(構成/AERA dot.編集部・岡本直也)