あなたの周りにムダにやる気を下げてくる人物はいないだろうか? 経営・組織戦略コンサルタントの西野一輝氏は、こうしたやる気を下げてくる人物への対策を『モチベーション下げマンとの戦い方』(朝日新聞出版)として上梓した。今回のテーマは「『情熱が足りない』と言ってくる人」について。本書より抜粋、再構成して紹介する。
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「情熱が足りない」
知人のCさんは、上司から呼び出され、仕事ぶりについて指摘されたといいます。さらに、上司はその翌日にCさんを居酒屋に連れていき、「この店のスタッフって情熱を感じるよね」と言いながら、「情熱をもって仕事をしてほしい」とまくしたてるように語ってきたのです。
こんなふうに「情熱」や「愛」といった、抽象的なものを求めてくる上司・仕事先は意外に多いようです。
ちなみにそのお店は、居酒屋甲子園というイベントで高い成績を出したスタッフがいるお店のようで、声が大きく元気にサービスするのが特徴。その元気さを「情熱」と捉えて彼らの姿勢を見せたいと思ったようです。
もちろんスタッフは情熱をもって仕事に取り組んでいるように思えましたが、上司は表面的な姿勢ばかりを情熱と感じているようで、Cさんは「明日から大きな声で話すようになれば情熱を感じてくれるんですかね」と嘆いていました。
かつて私も「本気さを感じられない」と上司に言われたことがあります。何を求めているのか全くわからず、大いに悩みました。いまとなって考えると、「もっと細かく報告が欲しい」とか、「発言するときの声を大きくはっきりしてほしい」とか、そんなことを求められていたのだなと感じます。
仕事に対する想いや夢、さらには、それを体現する仕事ぶりや、テキパキした姿勢やスピード感といった、本質的な情熱の意味を理解して要求してくるのであれば、部下も理解はできます。ところが、何だかよくわからない「気合のようなもの」を求められると、モチベーションは下がるだけです。「よし頑張ろう」と意欲が上がる人はまずいないでしょう。
そもそも「情熱」とは何でしょうか?情熱という言葉を仕事で一般的に表現するなら「こだわり」と言えるかもしれません。
たとえば、ビールメーカーの営業が「休日も散歩しながら自社製品の陳列状況を観察してしまいます」と仕事に対する想いを語ってくれたとしましょう。たとえ声が小さくても、「繁盛している店舗の陳列方法はメモをして、取引先にも紹介するように心がけています」と話してくれる人には、情熱は感じるのではないでしょうか。