AIを使った機械翻訳の性能が飛躍的に向上。勤務中に日本人が英語を話すことを禁じる会社も出てきた。どれぐらい正確で速い翻訳なのか。AERA 2021年4月26日号から。
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勤務中に日本人社員が英語を話すこと、外国人社員が日本語を話すことを禁止する──。
AI翻訳の開発・運営を手掛けるロゼッタが3月、そんな驚きの発表をした。同社のリリースには、「長年にわたって人類を分断し続けた言語の壁は、今ここに崩壊した」「長年続いた暗黒時代は終わりました」といった刺激的な言葉が並ぶ。
五石(ごいし)順一社長は2004年の創業以来、言語フリーの世界を目指してきたという。
「外国語で仕事をするのは、生産性で見るとめちゃくちゃです。理解したつもりでも半分しかわかっていない、英語ができるだけで専門外の仕事をやらされる、逆に語学ができないから能力を評価されない……。そんなことは無数にありました」
同社の子会社であるMatrix社が実用レベルの自動翻訳機能を組み込んだVR(仮想現実)空間の開発に成功したことで、今回の「外国語禁止」に踏み切った。母語が違う社員のやり取りはこのシステムを通して行うが、既にほぼすべての業務をリモート化しており支障はないという。
■「世界一」の技術を集積
システムはビデオ通話などを行えるオンライン上の会議スペースで、相手が話した言葉が選択した言語に翻訳されて画面上に表示される。自動で議事録を作成する機能もあり、例えば「英語と日本語で行った会議の北京語の議事録」などもダウンロードできる。現在7カ国語に対応しており、数ある技術のなかから「世界一を集めた」ことで、専門的な内容も含む業務使用に問題のないレベルに達したと五石社長は自信を示す。
「私自身、仕事で英語を使ってきましたが、どうしてもわからない単語を別の単語に置き換えるなどして表現の質が下がってしまう。今は海外の投資家とのやり取りなどでもこのシステムを使っています」