林:脇の方って、主役の方の周りを取り囲むふつうの人々を演じるわけで、そこで見てる人に強い印象を残したり、「この人いいな」って思わせるのって大変なことですよね。

光石:ただ、どうなんでしょう。若いころはそうやってアピールして帰らなきゃと思ってやるんですけど、たいがい肩透かしにあうんですね。その作品にとってはそれが邪魔になるんでしょう。20歳ぐらいのころ、相米慎二監督の映画にちょこっと出させていただいたんですけど、怒られまくったんです。

林:何か残して帰ろうと思ったんですか。

光石:いま考えると、そういうのが見えてたんでしょうね。こいつ、疲れて思考停止になるぐらいまで何回もやらせて、そのあと撮ろうと思ったんじゃないかと、今は思ってるんですけどね(笑)。

林:ほぉ~、なるほど。

光石:俳優がそこで何かを残して帰ろうなんて、そんな個人的なことは、その映画にとって何も必要ないことなんですね。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

光石研(みついし・けん)/1961年、福岡県生まれ。78年、16歳のときに映画「博多っ子純情」のオーディションを受け、主役に抜擢される。以降、さまざまな作品に出演し、NHK大河ドラマや連続テレビ小説でも名バイプレイヤーとして活躍。最新出演作の映画「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」が全国映画館で公開中。放送中のドラマ「桜の塔」(テレビ朝日系)、「珈琲いかがでしょう」(テレビ東京系)にも出演。

>>【後編/光石研「作業着に埋もれてしまう俳優なんです」 脇役への本音】へ続く

週刊朝日  2021年4月30日号より抜粋