応援演説に駆けつけていた元自民党幹事長、石原伸晃衆院議員は「ひどいことをやった人がいました。まず謝らなきゃいけない。広島を歩かせていただき、そう思った」とフォローせざるを得ない様子だった。

 また、自民党は河井夫妻から買収として、カネをもらった地方議員が
まったく動けず、集票につながらなかったことも敗因の一つだ。カネをもらった地方議員は今後、「被買収」として起訴される可能性が大きいためだ。そして、自民党は河井夫妻に1億5千万円という巨額な選挙資金を投じ、まだ収支報告書すら提出できていない。「政治とカネ」の問題が最後まで重くのしかかった。

「西田陣営にテコ入れといっても、カネはダメでしょう。コロナ禍で大臣や知名度ある議員の応援も限られる。地元で頑張ってもらうしかなかった」(自民党の幹部)

 西田陣営は自民党と公明党の連立与党が軸だ。宮口氏のスキャンダルが雑誌で報じられ、選挙戦終盤の情勢が宮口氏に有利との情報が流れた。

「公明党の地方議員たちは『だいたい河井夫妻のせいで、自民党の再選挙になった』と文句を言い、自民党の支援者と口論。陣営は険悪になり内部分裂でしたよ」と自民党の広島市議は打ち明ける。自民党幹部はこう語った。

「負けるべくして、負けたのだ」

 衆院北海道2区の補欠選挙は、元農相の吉川貴盛被告が鶏卵汚職で議員辞職に追い込まれてのものだった。野党統一候補、前職の松木謙公氏が保守系無所属の候補らに圧勝、5回目の当選を果たした。
世論調査でもダブルスコア以上の数字で、優位に立っていた松木氏。

「10月までに解散があるから、もう一度、選挙をやらなきゃいけない」(松木氏)

 保守系無所属として立候補した元アナウンサーの鶴羽佳子氏や弁護士の長友隆典氏に自民党の国会議員が応援に入った。

「補欠選挙で勝つというより、そこそこの得票をあげて、次の解散総選挙で、自民党候補になりたい。そんな選挙戦でしたね」と自民党の北海道議は苦笑する。だが、今回の松木氏の圧勝で、解散総選挙で2人が自民党候補となれるかは微妙だという。

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始まった「菅おろし」