4月25日に投開票された3つの国政選挙と同時に行われた名古屋市長選挙で現職の河村たかし氏が4期目の当選を果たした。衆院議員を5期務め、名古屋市長に転身した河村氏。2019年のあいちトリエンナーレを巡って、対立した愛知県の大村秀章知事へのリコール活動で偽造署名問題が浮上していた。そこへ新型コロナウイルス感染拡大でこれまでにない逆風の選挙戦だった。
事実上の一騎打ちとなった相手は自民党を離党した元名古屋市議会議長
横井利明氏。陣営には「反河村」を旗頭に、連立与党の公明党だけではなく、立憲民主党、共産党まで加わった。それでも河村氏が勝った。
「これほど追い詰められてもなぜ、勝てるの? 選挙モンスターだ」
自民党幹部からもこう驚嘆の声が上がった。
過去3度の市長選挙では午後8時に「当確」が打たれていた河村氏。
「どないなっとりますか」
今回は河村氏も自らあちこちに電話を入れて、情勢を探るほど苦戦だった。出口調査の数字を見ても、河村氏が厳しい選挙戦を強いられたのは、
偽造署名問題とコロナ対応だった。有権者の半分近くが2つ問題で河村市政に疑念を抱いていた。
公約にコロナ対策として名古屋市のすべての市民に2万円の商品券を
配ると公言した横井氏が選挙戦初日、いきなり先制攻撃を放った。
「河村氏は大村知事へのリコール偽造署名の疑いもある。大村知事と仲が悪い河村氏では、名古屋市にコロナワクチンが十分に届かないという話がある」
コロナワクチン接種は責任をもって行うことを国が明言している。
河村氏と大村氏が対立していようが、コロナワクチン接種に何ら影響はない。
「名古屋市だけではなく、国民最大の関心事であるワクチン接種が河村氏ではできない可能性がある、と指摘され、前半戦は大きなダメージがあった」
河村氏が率いる地域政党「減税日本」の名古屋市議はこう言う。
期日前投票がはじまると、自民党から共産党までが結束した横井氏が組織を背景にして出口調査でも、河村氏をリードし、優位に選挙戦を展開した。