「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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感動で胸が熱くなりました。競泳の池江璃花子選手が、日本選手権で4冠を達成し、東京五輪女子代表に内定。
4月4日の女子100メートルバタフライで、プールをあがる前から涙を流している姿、そして「努力は報われるんだなと思った」という言葉に、私も思わずもらい泣きしてしまいました。
国民の期待を一身に背負う日々から、試練の日々へ。そこからまたはい上がった。日本だけではなく、全世界に勇気と感動をもたらしたと、心からうれしい気持ちになりました。
彼女の親の年代の私は、「神様もうこれ以上、苦労はさせないで」と親心にも似た思いも抱いてしまいました。
印象に残ったのが「過去の自分には戻れないけれど、今の自分が自分だから」という言葉です。
過去は過去。いま成長し続けている自分こそ、自分。笑顔で堂々と話す姿が、本当に素晴らしい。
まだ20歳で、普通ならなかなかそう割り切れないと思います。そこにいきつくまでの葛藤や苦悩は想像を絶するものであったに違いありません。ご自身は「あくまで目標は2024年のパリ五輪」と言われていました。ですが、私はひそかに、期待もこめて「池江さんなら、東京五輪に『帰ってくる』んじゃないか」とも思っていました。
たとえば昨年の日本学生選手権。キラキラとした、「また表彰台に立ちたい」という強い意志を感じるアスリートの目をされていた。そして、それを現実にした。夢みたいなことを本当に起こしてしまう彼女の「運命の強烈さ」も感じます。
彼女が東京五輪に参加することはとんでもなく世界を勇気づけることになると思います。日の丸を胸に、スタート台に立たれる日を楽しみにしています。
Go Rikako!!
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2021年5月3-10日合併増大号より