山田医師は、18年3月に虎の門病院を定年退職し、4月に、森山記念病院間脳下垂体センター設立と同時に赴任している。山田医師は41年間勤務した前任地の虎の門病院時代に、下垂体腫瘍の難症例の手術を数多く手がけ、「下垂体腫瘍の治療なら虎の門病院」と言われるまでになった。その実績に基づき、森山記念病院においても、下垂体腫瘍の手術数を増やしている。
森山記念病院に赴任した当初は、慣れない環境のもとで、虎の門病院と同等の手術ができるのか、医療の質を担保できるのかといった点について、山田医師は不安に思うこともあったという。
「しかし、実際には何も困ることはありませんでした。当院は、最新鋭の治療機器や専門のスタッフなど、あらゆる面でとても充実しています。現在、私のもとには6人の医師がついてくれています。彼らには手術の指導をしていますし、内分泌の専門医を取得してもらえるようにしていますので、今後さらに充実した治療ができると考えています。内科の医師や病理の医師らと協力し、センター機能を発揮しながら集学的に診ることもできています」
このような環境のなか、難治性、再発例、他院で対応に苦慮するような患者を次々に受け入れ、治療にあたっている。また、現在では、虎の門病院も山田医師の後進の医師たちが活躍しており、森山記念病院と虎の門病院とで、治療する患者をほぼ分け合っているような状況になっているという。
下垂体腫瘍は疾患数の母数は変わっていないが、近年は脳ドックなどの検査により発見される機会は増えているという。
「今は患者さん自身がインターネットで情報を調べて受診される数は確実に増えていると思います」
脳腫瘍の治療を受ける患者へのアドバイスを山田医師はこうくれた。
「ひと口に脳腫瘍といってもいろいろな病気があります。治療を受ける病院の得意分野をきちんと把握して受診してください。私は、下垂体腺腫に特化して数多く手術をしてきましたが、それ以外の腫瘍の患者さんについては、当院の別の先生、得意分野を持つ大学病院やがんセンターへご紹介しています。誤りのない情報をきちんと提供してくれる、病院間でのネットワークを持っている医師に相談することをお勧めします」
(文/伊波達也)