日本郵便の看板
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1月に就任会見した郵政3社長。中央が日本郵政の増田寛也社長(C)朝日新聞社
1月に就任会見した郵政3社長。中央が日本郵政の増田寛也社長(C)朝日新聞社

 この4月で創業150年を迎えた日本郵政グループ。不正が多数発覚したかんぽ生命保険の営業再開にはこぎ着けたが、不祥事の後始末の仕方には見過ごせない問題がある。『郵政腐敗』(光文社新書)を出版した朝日新聞経済部の藤田知也記者がリポートする。

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 3月24日、日本郵政グループは4月からの保険営業の再開を前に、不正販売問題の社内処分がほぼ完了したと発表した。本支社幹部を含む処分人数は、累計3300人超。このうち現場の郵便局員への処分は2200人超。不正と認定した局員の上司は686人が処分を受け、さらに日本郵便とかんぽ両社長を含む本支社役員・担当幹部ら396人にも処分を実施した。

 だが、処分された上司・幹部1082人のうち、部下や担当部門の「不正を知りながら見過ごしていた」と認定されたのは、たったの2人! ほかにパワハラ行為を認定された上司が約50人いるものの、1000人超の上司・幹部は、まさか部下が不正をしていたとは知らなかったという前提で、「実態把握が不十分」などの理由で処分されている。つまり、暴走して悪さを働いた現場の郵便局員の「管理責任」を問われたにすぎない。

 この結果、現場の郵便局員には解雇を含む厳罰が科せられたのに対し、上司・幹部は相対的に軽めの処分で済まされた。

 しかし、不正の実態は、この処分の「前提事実」と異なるのは明白となっている。

 過大なノルマを現場に押しつけ、不正を上司らが黙認・助長していたとの証言は、かんぽ問題を調べた特別調査委員会の報告書にも数多く記載されている。実際、インストラクターと呼ばれた保険営業の指導役社員が研修などで不正手法を教え、それが正しいやり方と信じ込む郵便局員を野に放っていたが、不正指導を理由に処分されたインストラクターは1人もいないのだという。

 それにもかかわらず、現場にばかり厳罰を科し、上司らが厳しい処分を免れる事態はなぜ許されるのか。

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「具体的な事実」がないと処分できない