副作用があまりに苦しい場合、「転移・再発がんの場合は無理に治療を続けるべきではない」と高橋医師は言います。

「転移・再発がんの治療目的は、がんの増殖を抑えることでできるだけ長く、いい状態を保つこと。食事ができなくなるようなつらい副作用が続けば体力が低下し、かえって命を縮めるようなことになってしまいます。ただし、このようなことがないよう、現在は治療と同時に副作用を軽減する薬も投与します。また、治療を開始したら、2、3カ月おきに効果とともに副作用の有無や程度を確認して、継続可能かを判断していきます」

 副作用が強く出た場合、「一度休んで、元気になったら再開する」「薬の量を減らして治療を続ける」などの選択肢があります。

 副作用というと脱毛や吐き気が知られていますが、「薬の種類が増えた分、副作用の種類も多岐にわたります」と高橋医師は言います。

「抗がん剤や分子標的薬の副作用で比較的多いものに白血球の減少(感染症にかかるリスクが高くなる)、発熱・悪寒、食欲低下、倦怠感、皮膚障害、便秘・下痢があります。このうち皮膚障害は分子標的薬に多く見られ、ニキビのような皮疹、皮膚乾燥症、手足症候群(強い圧力が加わる手のひらや足の裏、かかとなどに紅斑や痛みが起こる)が知られています。ただし、食欲不振、倦怠感以外の副作用には効果的な薬があります」

 免疫チェックポイント阻害薬では「免疫関連有害事象」という重篤な副作用が起こることがあります。間質性肺炎やI型糖尿病、肝機能障害などで、薬を扱う病院の多くは看護師や薬剤師などがチームを作り、副作用に迅速に対応できるような態勢を整えています。

 新薬のニュースが話題になると、「新しい薬を使ってほしい」と思う人もいるかもしれません。

 しかし、出たばかりの薬は思わぬ副作用が出ることがあり、「標準治療で効果が得られない人」など使える人が限られているため、詳しく知りたい場合は医師に確認してください。薬物療法では、科学的根拠に基づいて、安全かつ、その時点で最も効果が期待できる薬を使います。

「生存期間中央値(いわゆる平均的な生存期間)の延長やがんの縮小効果など、具体的な数値がわかっています」(同)

【取材した医師】
がん研有明病院 副院長 総合腫瘍科部長 高橋俊二医師

(文/狩生聖子)
※『手術数でわかる いい病院2021』より

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