憲法記念日を前に、政治的中立性が求められる自衛隊の、ある駐屯地の公式ツイッターが物議を醸している。
北海道札幌市内に位置する陸上自衛隊「真駒内駐屯地」。さっぽろ雪まつりにおける雪像制作隊として、地元ではよく知られている。その公式ツイッター「陸上自衛隊 真駒内駐屯地」の発信が、4月に入って以降、急にきな臭くなった。まるで「ネトウヨ」のアカウントのようなリツイートがめじろ押しなのだ。
例えば、靖国神社春季例大祭が始まった4月21日。安倍晋三前首相の「国の為に戦い尊い命を犠牲にされたご英霊に対し、尊崇の念を表するために参拝をいたしました」と書かれたツイートをリツイート。どうやら、陸上自衛隊真駒内駐屯地のツイッターを運用する「中の人」は、熱烈な安倍前首相のファンのようで、その後も立て続けに安倍前首のツイートや、安倍首相関連のツイートをリツイートしている。以下はそのごく一部だ。
「情報組織をしっかりと作る必要があると思いますよ。先日のJAXAの件は氷山の一角ですから」(ネット番組での安倍前首相の発言)
「今日のデザートはパイナップル。とっても美味しそう」(安倍前首相自身のツイート)
「ポスト菅 再々当番を…。安倍前首相に期待広がる、体調回復・活動盛ん」(読売新聞オンラインに掲載された記事)
駐屯地とはいえ、自衛隊の公式ツイッターが、特定の政治家の発言内容をリツイートすること自体が異常だ。しかも、安倍前首相は「憲法の中に自衛隊を明記する」という積極的改憲支持を象徴する人物。その発言は当然、政治的な意味を持つ。
別の日には、立憲民主党・福山哲郎幹事長の発言を引用した「自衛隊協力の大規模ワクチン接種会場の新設に反対」とする「ツイッター速報」をリツイートしている。福山幹事長は、4月27日の定例記者会見で記者とのやりとりの冒頭で「(菅政権が発表した)大規模ワクチン接種会場案についてどう思うか」と問われて「唐突感がある」と答え、これまでの菅政権のワクチン対応に不信感を示した。しかし、「自衛隊協力の大規模ワクチン会場の新設に反対」とは発言していない。「ツイッター速報」の見出しは、正確さを欠いている。