マイノリティーな存在である仮面浪人には、今でも偏見や風当たりの強さが残っているという。

「例えば、何浪もして早稲田本命で入学した人や、愛校心の強い人にとっては、その場所に納得していない仮面の存在はうれしいものではない。仮面がバレて居づらくなり、大学を辞めてしまうケースは多い」(同)

 それゆえ、自らが仮面浪人であることを周囲に伝える「仮面のカミングアウト」には、細心の注意を要する。前出のサークル幹部の一橋大生も、仮面浪人中だった中央大学法学部の在学時、カミングアウトするか否かで葛藤した。

「隠し続けることに、だんだんと無理が生じていきました。仮面時はサークルにも入っていませんでしたし、普段何をしているのかと聞かれたときに、言い訳が苦しかった」

 結局、同級生への仮面のカミングアウトは、信頼できる友人2人だけにとどめたという。

「(中央が)第1志望だったかどうかで、カミングアウトしても大丈夫かどうかを見極めました。特に、中央の法学部は看板学部で、誇りに思っている人もいます。なので、滑り止めや推薦で受かった人など、中央法に対する思い入れが強くない人だけに話しました」

 同級生だけでなく、親からの理解を得ることも難しいことが多い。

「会員には、親に仮面浪人をすることの許可を得られていない人の方が多い。親としては、どっちつかずになって留年や退学をされるのは心配だし、やはり大学をやめられたら困るという気持ちが強い。仮面の子もそれがわかっているだけに言い出せないのです」(松尾さん)

 こうした苦労を重ねても仮面浪人を貫くのは、志望校へのあくなき執念があるからだ。昨年もサークルから東大合格者を輩出した。合格を果たしたのは、男子学生のNさん(20)。早大政治経済学部に在学中だった昨年に仮面浪人し、今春から東大の文科II類に通っている。

 東大受験は3度目で、初めて合格した。1度目の高校3年時は惜しい形で落ち、ほかに受かっていた慶応大には進学せず浪人。1年の浪人生活を送るも、2年目もボーダーラインにわずかに届かず、不合格。再度浪人したかったが、親の反対を受けて早稲田大に進学した。

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「死ぬまで受験を続けていたと思う」