株価同様、政権支持率の「含み益」を抱え、参院選に突入する安倍政権。身内より維新をえこひいき、70歳定年も無視などやりたい放題だが、“安倍独裁”の下、党内は「もの言えば唇寒し」の状態だ。しかし、「ちょっと待った」と立ち上がった男がいた。小泉進次郎氏(32)ら若手議員だ。
発端は、飲食店チェーン「ワタミ」の創業者の渡辺美樹氏(53)と同じ日に自民党が大日本猟友会会長の佐々木洋平氏(71)を比例区で公認したことだ。比例候補者には「70歳定年制」があるのに、今回は特例扱いとしたのである。同会の会員は約13万5千人。過去、橋本聖子参院議員(48)を支援するなどしてきたが、さほどの集票力はない。二階俊博総務会長代行(74)がごり押しし、最後は官邸もゴーサインを出した。
これに進次郎氏がかみついた。「自民党は変わってないなと思われるに決まっている。反映されにくい若い声をより多く国会に届けるべきで、今回のはおかしい」と、久々に進次郎節を炸裂させた。
表立って批判できない先の中堅議員は「『そのとおり!』と思わず膝を打ったよ。誰が見たって公認はおかしい」と話した。
今政権が進めるさまざまな方向性に異を唱えるのは、実は進次郎氏だけではない。6月3日午後、衆院決算行政監視委員会でちょっとした“乱”が起こった。質問に立った自民党の秋本真利衆院議員(37)が鋭くこう切り込んだのだ。
「核燃料サイクルがうまくまわっていないのは誰の目にも明らかだ。使用済み核燃科が出ても、処理する再処理工場がまわらない。まわってもプルトニウムを燃やす(高速増殖炉の)『もんじゅ』は完成していない。高レベル放射性廃棄物を埋めようとしても地層処分する候補地すら見つからない。一刻も早く撤退し、出口のある政策を打ち出すのがわれわれ世代の使命です」
答弁に立った茂木敏充経産相(57)は「核燃料サイクルの必要については、選挙期間、先生のご地元に応援に伺ったときにもお話をさせていただいた」とクギを刺した。
原発輸出を推進する安倍政権で、自民党議員がこうした質問をするのは極めて異例だ。実はこの秋本氏、当選1回の議員15人ほどでエネルギー政策に関する勉強会を主宰している。「原発についての基礎知識をつけようと、声掛けをし始めました。反安倍でも反執行部でもない。ただメンバーに原発推進者はおらず、程度の差はあるが皆、原発には懐疑的です。原発を輸出するより、蓄電や省エネ技術、再生エネルギーを産業として育てて輸出したほうが日本にとってはプラスだと思う」(秋本氏)。関係者によると、今回質問通告をした段階で、各所から秋本氏に「圧力」めいたものがあったという。
百家争鳴、そして腹に一物あっても最後は一致結束する。それが自民党の伝統であり、エネルギーの源だったはずだ。たとえ蟷螂(とうろう)の斧であっても、さまざまな意見に聞く耳を持つ度量を政権は持つべきだ。
※週刊朝日 2013年6月21日号