俳優の成田凌と映画監督の松居大悟が初めてタッグを組んだ映画「くれなずめ」(全国順次公開中)。コメディータッチでありながら、若者たちの死生観を織り込んだ作品に、二人はどんな想いを込めたのか。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号に掲載された対談記事を紹介する。
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―——友人の結婚披露宴で余興をするために集まった高校時代の仲間6人。だが、吉尾(成田凌)だけは違う時間を生きている。ふとした会話から、決して忘れることができない5年前の“あの日”が、それぞれの目線で描かれる。松居大悟監督が大学時代の友人との間に起こったできごとに着想を得てつくりあげた作品だ。
松居大悟(以下、松居):吉尾は、明日にはいなくなってしまう気がするような、はかなくて、でもいなくなると寂しくて会いたいと思わせる、ニュアンスがすごく難しい役だと思うんです。これまでお芝居を見てきて、日本の俳優でその雰囲気を出せる人は成田君しかいないと思い、お願いしました。
成田凌(以下、成田):ほぼ初対面の状態で、二人で飲みに行って。企画が動き出す前にもかかわらず、5、6時間ずっと話していましたね。
■どうしようもない6人
松居:どんな作品にしたいかと夢を語っていたよね。モデルになった人物は確かにいるのだけれど、僕は結局彼のことがよくわからないままだった。でも、成田君に演じてほしいと思ったわけだから。そこはもう、成田君が思ったように演じてもらうことで、「彼ってじつはこういう人物だった」と僕自身が教えてもらうような感覚でした。
成田:初めて脚本を読んだときから、「すごい面白いな」と思いました。男の子6人が集まって話すことって言葉にすると、こんなにどうしようもないんだって(笑)。もちろん、撮影中や作品を2、3回と観ていくなかでは、「これでいいのかな」と思うことはありました。でも、嬉しい気持ちで撮影現場に入って、完成した作品を観た後も嬉しい気持ちでいられた。それは理想的なんじゃないかな。現場では、アドリブのシーンはほとんどなくて、結構決め込んで撮っていましたけど。