メダカといえば、近所の小川をちょろちょろと……。というのは昔の話。今や「泳ぐ宝石」と言われ、高値で売買されている。その弊害も出てきた。AERA2021年5月17日号の記事を紹介する。
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たかが「メダカ」と思っていたら、すごいことになっていた。
3月下旬。福岡県中間市(なかまし)にあるメダカ専門店に何者かが侵入した。盗まれたのは、長い時間をかけて品種改良したオリジナルのメダカだという。驚いたのは被害額だ。300匹以上盗まれ、総額110万円になるという。1匹当たり、平均3600円也。
メダカといえば子どものころ、近所の小川をちょろちょろと泳いでいるのを捕まえたくらい身近な存在だった。それがなぜ、こんな高価になったのか。
「ワンペア20万や30万円という金額のメダカも存在します」
と話すのは「日本メダカ協同組合」理事長で、改良メダカと園芸の専門店「花小屋」(埼玉県日高市)店主の戸松具視(ともみ)さん(43)だ。
■オークションで詐欺
戸松さんによれば、メダカの価格高騰のきっかけは約20年前にさかのぼる。
それまでメダカは、日本古来の野生種「黒メダカ」をルーツに20ほど改良品種がいた。それがある時、ずんぐりむっくりした体形の突然変異のメダカが生まれた。「ダルマメダカ」と名づけられ、これを機に品種改良が盛んになった。
いまでは個人による交配も進み、200種類以上にもなる。白、青、琥珀、ラメが入ったメダカまで。美しいその姿は「泳ぐ宝石」といわれるほどだ。
メダカの値段はどうやって決まるのか。先の戸松さんは、ポイントは「表現」にあるという。
「ダルマやヒレ長といった体形、体色、体内光、体外光など様々な『表現』があります。そのなかで、珍しいメダカに価値がつき、価格が決まります」
飼育が簡単で、素人でも繁殖を楽しめる。そしてコロナ禍で巣ごもりが長引くなか、癒やしを誘うメダカは空前のブームだ。