新型コロナが収束しないまま開催が目前に迫り、延期や中止の声も高まっている東京五輪。そんな中、五輪組織委員会は、今になって転職サイトで人材を募集し始めた。五輪を安全に運営することに欠かせないセキュリティーエンジニアなどが募集対象だが、その待遇はキャリア採用とは思えないほど低い。一体なぜこんな時期に慌ただしく募集を始めたのか。こんな条件で人材は集まるのか。五輪組織委に疑問をぶつけた。
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社会人向け転職サイト「リクナビNEXT」には、4月下旬から五輪組織委による求人情報が掲載されている。募集職種はセキュリティーエンジニア、アプリ開発、プロジェクトマネジメントなどの5職種。
五輪の運営にかかわる仕事なだけに、求める人材の水準は高い。SEは実務経験に加え、日常会話レベルの英語力。セキュリティーエンジニアは「正規表現やDB検索によるログ検索及び解析を実施した経験」などが必須条件に組み込まれている上、TOEIC600程度の英語力を推奨している。
その一方で、給与などの待遇はシビアだ。例えば、セキュリティーエンジニア(主事)の給与は23万5800円。役職付きにもかかわらず、大手企業であれば新卒から数年目の給与水準だろう。決して厚待遇とは言えない。また、「求人の特徴」の項目には「完全週休2日制」とあるが、7月以降の休みは4週ごとに4日以上という注釈が付いており、事実上は「週休1日制」となるのだ。
極め付きは、3カ月の試用期間。五輪の開会時期は7月23日から8月8日までなので、求人募集が締め切られる5月18日の直後に採用されたとしても、試用期間中に本番を迎え、試用期間を終える前に閉会することになるのだ。
この求人を見たエンジニアの30代男性は、「SEの職をナメているとしか思えない」と失笑する。
「週休1日で、ずっと雇用してもらえるわけでもない。最低でも給与は3倍はもらわないと募集してみようという気にもならない」