そもそも、五輪組織委はなぜ開催まで3カ月を切ったこのタイミングで、5職種も募集をかけたのだろうか。組織委戦略広報課の担当者は書面でこう回答した。

「すでにアプリケーションの企画・設計の担当は採用され、既存の職員と共に開発にあたってきており、アプリケーションは間もなく運用を開始する段階です。現在、継続して募集しているのはアプリケーションの導入と会場での運用を担う職員です。なお、現在募集している職員は、大会直前~本番時の運営を担うポジションのため、従来から4~6月に着任する採用計画としています」

 また、給与や試用期間の設定については、

「給与は弊会の規定により決定しています。(試用期間については)弊会で採用する職員は、就業規定により一律3カ月の試用期間を設けています。契約期間に応じ、個別に定めることもあり得ます」

 とのことだった。

 転職市場に詳しい千葉商科大学准教授の常見陽平氏は、求人内容についてこう疑問を呈する。

「求めるスペックに対して、給与が見合っていない。ITも英語もできる人材は、『聖人君子スペック級』です。このレベルなら年収700万円クラスのIT企業や外資系企業で働くはず。組織委は条件を吟味している時間も余裕もなく、人材が足りないことがわかり、場当たり的に求人を出したのではないかと思います」

 とはいえ、応募する人材はいるだろうと話す。

「五輪を支えたいという熱意を持った人もいますし、レアな体験ができるという点で、やりたいと思う人もいなくはないだろうと思います。いわゆる『使命感』や『レア感』に価値を見いだすタイプの人は来るでしょう。ただ、優秀な人材が集まる見込みは薄いと思います」

 常見氏は募集内容から推察できる組織委の現状をこう分析する。

「コロナの影響で運営方式が変わったことで、『新たな仕事が増えた』のだと思われます。その上、離職による人材流出があり、人手不足になった可能性もあります」

 医療従事者以外の職種でも、急ごしらえで人材を集めなければならないような状態で、本当に五輪を開催することはできるのか。不安は募るばかりである。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)

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