多摩市の職員は約800人なので、300人といえば実に全職員の4割弱にあたる人数だ。多摩市では3カ所の会場で集団接種を行っているが、派遣される職員は1会場に10人程度とのこと。職員たちをローテーションで回すにしても、いくら何でも多過ぎるのではないだろうか。

「健康推進課に置いたワクチンの特命担当が中心になって会場の運営にあたりますが、受付や市民の方への付き添いなどのため、いろいろなセクションの職員が行くことになります。8月末まで3カ月間実施するので、かなり多くの職員が接種会場に関わります。市民の方からも、職員の感染対策もきちんとしてほしいとのご要望を受けておりました」(多摩市の担当者)

 多摩市の資料によれば、接種が予定されている65歳以上の高齢者は約4万3千人。まだ、ほとんどの市民が接種を受けられていないことを考えると、やはり不公平感は拭えない。

 一方で、接種会場で働く自治体の職員への接種について、これまであまり考慮されておらず、ルールが整備されていなかったことが問題とも考えられる。優先接種が問題視された茨城県城里町の町長も、13日の会見で「(接種会場の)管理責任者の私も医療従事者に準ずる」などと主張した。どの立場の、どのくらいのまでの人数を「医療従事者に準ずる」と認めるかの基準が曖昧なままでは、住民から「不公平」と疑念を招くことになってしまうのではないか。
 
 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師がこう指摘する。

「接種会場で働くのは若い職員が多く、彼ら彼女らが感染源になる恐れは十分にあります。接種会場で最前線に立つ自治体職員へのワクチン接種は必要で、厚生労働省が具体的な対策を取らなかったことが問題です。ただ、会場に派遣される職員数を考えると、多摩市の300人は少々多すぎる気がします。そもそもワクチンの供給量が足りないことが、こうしたモラルの問題が出てくることにつながっているのでしょう」

 どさくさまぎれ感が、どうにも残るのである。どこかに「特権意識」はなかったか。いささか市民感情への配慮が欠けていたように感じられる。

(本誌・亀井洋志)
 ※週刊朝日オンライン限定記事

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