撮り鉄の線路内立ち入りで、多摩川橋梁上に急停車した209系中央特快。乗客もいて、警官が出動するなど現場は騒然となった(写真:@Narukatsu201newさん提供)
撮り鉄の線路内立ち入りで、多摩川橋梁上に急停車した209系中央特快。乗客もいて、警官が出動するなど現場は騒然となった(写真:@Narukatsu201newさん提供)
AERA 2021年5月17日号より
AERA 2021年5月17日号より

「撮り鉄」のマナーが悪化している。一部が線路内に立ち入り、電車が止まる事件も起きているほどだ。マナー違反は、犯罪行為として処罰の対象となることもある。AERA 2021年5月17日号の記事から。

【図】主な「撮り鉄」事件簿はコチラ

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 SNSの普及が、マナー違反をあおり立てる。危険な状態で撮影した写真がブログなどにあふれ、それをまねしようと撮影合戦が過熱する。モラルハザード(倫理崩壊)は加速する一方だ。

 それを象徴するような「事件」が起きた。

 3月24日午後4時45分、撮り鉄が電車をストップさせたのだ。

 現場はJR中央線・立川─日野間(東京都)。それも多摩川橋梁の上で起きた。

 特急「踊り子」や「湘南ライナー」で使われた185系の定期運行が終わり、車両を解体するために長野総合車両センターに回送される途中だった。その姿を写真に収めようと、橋梁付近に撮り鉄たちが集結。一部が線路に立ち入り、列車を約30分にわたり停車させた。

■法律違反なら懲役刑

 JR東日本八王子支社によると、緊急停車した電車は、目的の185系ではなく、たくさんのお客を乗せた東京発高尾行きの209系中央特快だった。警官が出動する事態になった。被害届や告訴については「警察と相談中」(広報室)という。

 この「事件」を撮影した動画がユーチューブに残っている。それを見ると、カメラを持った数人が線路内に立ち入っている様子が映っていた。線路上で望遠レンズを装着したカメラを構える場面もあった。

 度を越した行為は、犯罪行為として処罰の対象となる。

 鉄道好きの小島好己(よしき)弁護士によると、在来線の線路に侵入した場合、鉄道営業法第37条違反で1万円未満の科料になることがあるという。

「今回のケースのように、危険回避のため列車の運転を止めざるを得ないことになれば、威力業務妨害罪に該当します。3年以下の懲役または50万円以下の罰金の刑罰の可能性があります」

 また、三脚が列車に接触するなどして「衝突等往来の危険を生じさせた」と認められれば、故意の場合は往来危険罪、過失の場合は過失往来危険罪が成立することもありうる。前者は2年以上の懲役、後者は30万円以下の罰金だ。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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