五輪マークのモニュメント(c)朝日新聞社
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 千葉県が12日、東京五輪の米国陸上チームが成田、佐倉、印西の3市内で予定していた事前合宿を中止したことを発表して大きな反響を呼んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大で選手の安全面に懸念が生じていることが大きな理由で、4月中旬に全米陸上競技連盟から合宿中止を伝える書簡が届いたという。

 米国だけではない。報道によると、個人資格で参加するロシアのフェンシングは同県の長柄町、パラリンピックで英国の車いすバスケットボールが浦安市で事前合宿を行う予定だったが、ロシア、英国からの申し出で中止に。中米・ベリーズもカヌー・スプリントと陸上の事前合宿を横芝光町で開催予定だったが、同町がコロナの感染拡大が続く中、医療提供体制などを考慮して選手の安全を確保することができないとして、ベリーズ側と協議した上で受け入れの中止が決まっている。13日現在で外国の30以上の競技団体が日本国内の事前キャンプ中止を決断したという。

「知名度の高い米国の陸上チームが中止にしたのは世界的に見てもインパクトが大きい。米国は少し前まで日本との友好関係もあるので、五輪の開催是非について態度を明らかにしていませんでしたが、コロナの感染拡大が広がっている状況が続き、米国の世論も開催反対の流れが一気に高まっています。米国陸上チームの今回の決断を受けて、他国も追随する可能性は十分にある。日本だけでなく世界的に五輪開催反対の声が高まるのは、政府が一番恐れていた事態です」(一般紙の国際部記者)

 海外の主要メディアも五輪開催に公然と異を唱えている。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は11日、「科学に耳を傾け、危険な茶番劇をやめる時が来た」と、大会中止を求めるコラムを掲載。元プロサッカー選手で米パシフィック大教授のジュールズ・ボイコフ氏はコラム内で、「五輪開催へ強引に突き進む理由は三つ。カネ、カネ、そしてカネだ」と国際オリンピック委員会(IOC)を非難した。また、米国の有力紙ワシントン・ポストも5日付けのコラムで、IOCのバッハ会長を「ぼったくり男爵」と批判。五輪開催は合理的でないと指摘した。英紙・フィナンシャル・タイムズも「五輪というギャンブルを推し進める日本」と、五輪開催を批判し、日本国内でも開催に向けて盛り上がりを見せておらず、反対の声が多いことを指摘している。

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