えらそうにいうて、あんたはどうなんや──。
その答えは、運がよかったから、に尽きる。わたしがサントリーミステリー大賞佳作を受賞してデビューしたのは1983年、大賞を受賞したのは86年のバブル前夜だったから、本が売れなくても出版社から注文をもらえた。90年には連載の注文ももらって同年代の会社員と同じくらいの収入を得られるようになった。決して裕福ではなかったが、それで満足だった。
そう、わたしはデビューした時期がよかった。各社の編集者にかわいがってもらえて、本を出しつづけることができた。エッセイも書いて原稿料をいただいている。
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する
※週刊朝日 2021年5月28日号