僕は何度も言うようにイヤイヤ描いています。これは若い頃には描けない作品です。老齢になって到達する心境で描くイヤイヤ・アートです。自分で見て何て下手くそだろうと思います。それでいいんです。年取って傑作をなんて欲どうしいです。人間は昨日より今日、今日より明日と進歩の神話に振り廻されています。人間には進歩などないです。進歩を信じて進歩を追求した文明を見て下さい。やがてこの文明に人間は滅ぼされます。コロナだって文明の進歩の結果の産物かも知れません。
僕は人間に進歩があるという考えは幻想だと思います。あるのは進歩ではなく変化と繰り返しだけです。またそれでいいんじゃないでしょうか。芸術など進歩しません。同じところをぐるぐる回っているだけです。芸術に限らず森羅万象はただ輪廻しながら転生するだけです。
だから僕の代表作はもしかしたら20代の処女作かも知れません。それ以後は輪廻しながら転生を繰り返すだけなので、頑張って20代の作品を越えたいとは思いません。人間の肉体も衰退あるのみで、来世に転生してまた初めからやり直せばいいんじゃないでしょうか。でも僕は今生を最後に打ち止めにしたいですけどね。
そして、死という新しいビジョンを体験したいと思います。
■瀬戸内寂聴「ご無沙汰しております。秘書の瀬尾まなほです」
横尾先生、ご無沙汰しております。瀬戸内の秘書の瀬尾まなほです。
私がここに書かせて頂くときは、いつも瀬戸内が書けない状況にあり、代わりに書かせて頂いております。
まず、瀬戸内の今の状況を説明いたしますと、昨秋もした脚の血管を広げるカテーテルの手術をするため入院しております。
何より痛みに弱い瀬戸内は、血管が詰まり足先の色が赤黒くなって、何もしていなくとも、ジンジンチクチク痛み、「ヒィッ!!」と声をあげて泣いていました。痛み止めも気休めにしかならず、一刻も早く手術をしてもらわないと治らないものでした。術後、詰まっていた血管が広がり、今まで血が流れていなかった毛細血管に血がぐんぐん流れ、そのおかげで少しずつ痛みは引いております。食欲は相変わらずあり、口も元気で、痛みがないときはとても元気です。今回は二週間ほどの入院で、脚の手術はとてもうまくいったようです。