中村:「この世は結局何なのだろう」「何のためにこの世界はあるのだろう」という問いへの答えを知りたい。哲学、心理学、物理学だけだと到達できない微妙なところを、占いなども含めて考えようと思ったんです。
■閉塞的な世界における占いや小説の存在価値は?
――イベントの視聴者から「この時代における小説の役割、占いの役割って何ですか?」という質問が来ていますが、いかがですか?
鏡:東日本大震災や、今のコロナ禍でも、僕の仕事はラッキーカラーとか、重要な意味を持たないメッセージを伝え続けている。「こんなことしている場合か」という思いもよぎります。でも、毎月、毎週、毎日、こうした些細な、たわいもないことが流れ続けるっていうこと自体が、日常を支えるものになるのではないかと思っています。
中村:はい。それにいいことが書かれていると、純粋に嬉しいですしね。
鏡:それくらいの加減でちょうどいいと思っています。絶望ばかり伝えられると本当に絶望しかなくなります。今回の『カード師』も、中村さんの代表作といえる『教団X』も、通底して人間の心の闇とか悪を語りつつ、ラストは一筋の光が感じられて、僕はほっとしました。
中村:強い闇を描くと、強い光を描く必要があると思っているんです。占いにも、善と悪があるように感じていて、鏡さんのように「占いは予言じゃない」って言ってくれる占い師さんの存在は、非常に重要だと思っています。占いがまたすごく流行っているって聞くんですが、どうですか?