鏡:面白いですね。まさに、運命がスタートしたところから終わるところまで、すべて決まっているのかどうか。「ラプラスの悪魔」のように、最初のひとつきで実は全部決まっているのか。我々の持つ自由の感覚は、仕組まれているだけなのか。運命という因果の鎖はどのようになっているのか。これは本作品以外にも中村さんの『教団X』などにも通底する大きなテーマなんでしょう。先ほど、「本の縁」というお言葉をいただきましたが、縁は参考文献のリンクにとどまらない。中村さんの作品を拝読すると、この宇宙を網羅して張り巡らされている因果の縁の連鎖と縛りの空恐ろしさを感じるようになってるわけですよね。

中村:「この世は結局何なのだろう」「何のためにこの世界はあるのだろう」という問いへの答えを知りたい。哲学、心理学、物理学だけだと到達できない微妙なところを、占いなども含めて考えようと思ったんです。

■閉塞的な世界における占いや小説の存在価値は?

――イベントの視聴者から「この時代における小説の役割、占いの役割って何ですか?」という質問が来ていますが、いかがですか?

鏡:東日本大震災や、今のコロナ禍でも、僕の仕事はラッキーカラーとか、重要な意味を持たないメッセージを伝え続けている。「こんなことしている場合か」という思いもよぎります。でも、毎月、毎週、毎日、こうした些細な、たわいもないことが流れ続けるっていうこと自体が、日常を支えるものになるのではないかと思っています。

中村:はい。それにいいことが書かれていると、純粋に嬉しいですしね。

鏡:それくらいの加減でちょうどいいと思っています。絶望ばかり伝えられると本当に絶望しかなくなります。今回の『カード師』も、中村さんの代表作といえる『教団X』も、通底して人間の心の闇とか悪を語りつつ、ラストは一筋の光が感じられて、僕はほっとしました。

中村:強い闇を描くと、強い光を描く必要があると思っているんです。占いにも、善と悪があるように感じていて、鏡さんのように「占いは予言じゃない」って言ってくれる占い師さんの存在は、非常に重要だと思っています。占いがまたすごく流行っているって聞くんですが、どうですか?

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「占いブーム」についての鏡さんの考えは…