鏡:なるほど。小説の随所に、そんな「仕掛け」があたかもサブリミナル効果を狙うかのように隠されているわけですね。初見の読者には心理的な効果が、そしてディープなファンには謎解きの面白さがあるという……。いや、それはすごいですね!

中村:他にも、ご著書にあったタロットカードが心理テストとして使えるというところも面白いなと思って、内容は変えていますけど使わせていただいている。鏡さんが『タロットの秘密』を書いてくださらなかったら、この小説はこうなっていない。もちろん自分の感覚で小説を書くんですが、本に出合うことによってインスピレーションが湧くことがある。本と本がつながる流れがある気がして……縁というか。

鏡:縁やつながりといえば、『カード師』の主人公は占いを信じていないといいつつ、信じたいという意識があるように感じました。信じていないのに、当たる占い師ですよね。主人公は無意識の動きやつながりをカードの中に感じてしまっている。単純に、占いを信じている、信じていないという話ではなくなっていて、その感覚がリアルに伝わってきました。

中村:主人公自身もそこが微妙なんですよね。

鏡:タロット占いの中で、「ジャンピングカードというのがあるんです。カードを切っているときにこぼれ落ちたり飛び出してきたりするカードがあり、これが重要なメッセージになっているという考え方があるのですが、それが、小説の中に何度か出てくる。

中村:え! それは、まったく知らなかった。そうなんですね。

鏡:その描写を見た時に、この主人公は占いを信じていないとしながらも、心の奥のほうでは信じてるのかなって思ったんです。

中村:占いというものの社会的な意味についても書いたつもりですが、ジャンピングカードについては知らなかったです。

■人はなぜ占うのか、占いに何を求めるのか

中村:僕、実は、過去に鏡さんに救われてるんですよ。

鏡:え、どういうことですか?

中村:人生で本当につらい時期に、たまたまテレビをつけたら鏡さんが出演されていて、そこで鏡さんが「乙女座の皆様、これまで本当にお疲れ様でした」と仰ったんですよ。ここから先は運気が開けるって。その「お疲れ様でした」という言葉にホロリと来て、何だか楽になったんです。実際に運が良くなったとも感じたりして。占いは言葉なのだなと。

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占いは基本的に信じていないという中村さんだが…