一方、65歳以上の高齢者については、「今回の調査対象に含まれるのは数人だったため、副反応もこの調査と同じになるとはいえない」と井上医師は言う。

 実際に自ら副反応を経験した医師にも話を聞いた。元ファイザー社臨床開発統括部長であり、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会委員を務める川崎市立看護短期大学長の坂元昇医師は、3月23日と4月10日にワクチンを接種した。2回目接種から16時間後に発熱し、翌日は38.5度を越えたという。

「私自身は発熱していても感覚的には少し熱っぽいかなと思った程度で、食欲もありましたし、それほど苦しい気持ちもありませんでした」(坂元医師)

 2回目を接種したのは土曜日。翌日に副反応が出たとしても、仕事をする月曜日には落ち着くだろうと考えての日取りだった。だが、それが誤算だった。

「月曜日の朝も発熱が続いていました。海外のデータなどで、高齢であれば副反応は比較的小さいということは承知していたのですが(注:坂元医師は68歳)、38度の発熱が2日間続くことは想定外でした。倦怠感と接種部位の筋肉痛はほぼなくなっていたのですが、発熱時は出勤できないため、会議の予定などをキャンセルしました」

 ワクチン接種の際に解熱鎮痛剤をもらったという坂元医師。しかし薬を飲んでも「熱はまったく下がらなかった」という。

「看護師の中にも解熱鎮痛剤が効かなかったという人がいましたし、『いままで体験したことのない』だるさを感じ、不安だったという話も聞いています。医療従事者でさえ不安なのですから、一般の人はより不安に感じるのではないかと思います。ごく少数の人だけでなく、多くの人が同じ状況を経験しているということを知っておいてほしいと思います」

 一方で坂元医師は、副反応があったことに「安心した」面もあると話す。

「データがあるわけではないのですが、副反応はおそらく体内における免疫反応の結果なので、守られているという強い安心感が得られたのも事実です。個人的な感想ですが、このワクチンには本当に効果があるんだという実感が湧きます」

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