街ですっかりお馴染みとなった、ウーバーの配達員。彼らを法で保護する動きは各国で相次いでいるが、日本は遅れている。新報酬体系になり配達員からは「水準の引き下げだ」という声が多いが、ウーバーは明確な説明を避ける(撮影/写真部・高野楓菜)
街ですっかりお馴染みとなった、ウーバーの配達員。彼らを法で保護する動きは各国で相次いでいるが、日本は遅れている。新報酬体系になり配達員からは「水準の引き下げだ」という声が多いが、ウーバーは明確な説明を避ける(撮影/写真部・高野楓菜)
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AERA 2021年6月14日号より
AERA 2021年6月14日号より

 ウーバーは5月10日、「新報酬体系」を全国に拡大した。配達員たちの間では、報酬をめぐり、戸惑いや不満が強まっている。AERA 2021年6月14日号の記事から。

【図】ウーバーイーツ新旧報酬体系の比較はこちら

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「ずいぶん下がりました」

 フードデリバリー「ウーバーイーツ」の配達員を続けてきた都内の男性(35)は憤る。3年近く配達員をしてきたが、辞めて別のフードデリバリーで働くようになった。理由の一つが、報酬が下がったことだ。

 5月10日、ウーバーはそれまで京都市、福岡市、神奈川県、那覇市の4カ所で先行導入していた「新報酬体系」を全国に広げた。改定前、男性は1件配達するごとに450円程度の報酬を得ていた。しかし、新報酬体系になったことで、同じように働いても、ほぼ一律300円になったという。

■言いたいことは山ほど

 ウーバーの配達員を辞めた理由は他にもある。働きにくくなったと感じたこともその一つだ。それまでは配達依頼がきた時点で報酬額、距離がスマホに表示され、それを見て依頼を受けるか拒否するかを選べたが、改定後はそれもできなくなったのだ。

「他にもウーバーには言いたいことが山ほどあります。サポートセンターに問い合わせても仕組みを理解できていない人が多く、一つの問い合わせに何日もかかるのが現状。今は他社で働きながらツイッターなどで情報を得て、しばらく様子を見ようと思います」(男性)

 2015年にカナダでサービスを開始したフードデリバリーのウーバーイーツ。日本には翌16年9月に上陸すると、急拡大。コロナ禍で失業した人たちの受け皿にもなり、今や数あるフードデリバリーで国内を代表するまでに。全国36都道府県でサービスを展開し、配達員は10万人近くに及ぶ。しかし、急成長の裏で配達員の間に不満がくすぶっている。報酬をめぐり、戸惑いや反発が強まっているのだ。

 埼玉県でウーバーの配達をする男性(29)は、報酬改定の前と後では、報酬が増えたと感じる時もあれば、減ったと感じる時もあるという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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