漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「あのときキスしておけば」(テレビ朝日系 金曜23:15~)をウォッチした。
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スーパーで働くポンコツ青年・桃地のぞむ(松坂桃李)は、大好きな漫画家・蟹釜ジョーこと唯月巴(=ゆいづきともえ、麻生久美子)と偶然出会い、いつしかキス寸前の関係に。
二人で出かけた沖縄旅行。しかし搭乗した飛行機が事故に遭い、巴は帰らぬ人に……。と、思いきや、桃地の前に巴の魂が乗り移ったという見知らぬおじさん・田中マサオ(井浦新)が現れた。
「僕の大好きな彼女は今、中年のおじさんの中にいます」というお話。
大好きな彼女(もしくは奥さん)がおじさんになる話、意外と定番だ。
クドカン(宮藤官九郎)脚本の「ぼくの魔法使い」は、奥さん(篠原涼子)とおじさん(古田新太)が正面衝突して入れ替わる。「パパがも一度恋をした」は亡くなった奥さん(本上まなみ)がおじさん(塚地武雅)になって戻ってくる物語だった。
美女がおじさんになるだけで、だいたいつかみはOKなのだ。でも今回はぽっちゃりな(古田)新太ではなく、シュッとした(井浦)新なので、絵づらがグッと「おっさんずラブ」になるあんばい。
脚本は大石静。ゆえにおじさんとイケメンがキャッキャする一方で、おばさんの扱いが非常に細やかだ、というか生々しい。
特に桃地の同僚の主婦・郷田さん(猫背椿)。
「忘れられないエッチさえすれば女は戻ってくるから。大人の女は気持ちだけじゃダメ! やらなきゃ!」などと、絶妙に下世話でことごとくズレた助言が、まさに「THEおばさん」なんである。
そして桃地の恋のライバルは、巴の元夫で編集者の高見沢(三浦翔平)。もうね、テレビ朝日の三浦翔平の使い方が完全に飛び道具。トンチキドラマの帝王・鈴木おさむ作品「M 愛すべき人がいて」のマサ役で、「俺の作った虹を渡れー!」などと絶叫して以来、トンチキ度への信頼が増すばかり?