だが、この動画にもコメント欄で批判的な意見が目立った。

「される方に原因があるという発言は。いじめる側の卑怯な言いわけ、隠ぺいしたい学校側がよく使う言葉のイメージがあります。加害者が改善してこなかった問題も、被害者が改善し対応しないといけないのかな。結局、問題解決を皆で被害者に押し付ける形になって…よけい追い詰めてしまうのでは」、「本気のイジメにあったこともなく、そばで見たこともない人が扱っていい問題ではない。言葉が軽い。イジメられてたあの頃にこの話を聞いたら絶望していたと思います。強くなる、なんて考えることができない精神状態になるんですよ」

 格闘家雑誌のライターは、朝倉の持論に理解を示す。

「朝倉未来の言いたいことは理解できます。いじめる人間が100%悪いけど、いじめられる側は対処法の一つとして武術を学んだり、肉体を鍛え上げれば見える景色が変わるかもしれない。プロボクサーの中には子供の時にいじめられていて、強くなりたいという思いでボクシングを始めたという選手が少なくありません。朝倉未来は決していじめられている人間が悪いとは思っていないし、救いたいという思いで自分の意見を語ったのだと思います。もちろん体を鍛えたりすることが色々な事情で叶わなかったり、強くなれない人もいる。その部分を動画の中でフォローして他の案を示せばさらに良かったと思いますが、彼の真っすぐな思いは伝わってきました」

 いじめの問題はデリケートだ。「いじめられる人に原因がある」と指摘することで、さらに精神が追い込まれる危険性がある。朝倉も「いじめている人間が100%悪い」という意見には同意している。そもそも、強くなることがいじめを乗り越える方法なのか。いじめに立ち向かわず、逃げても良いのではないか――。

 朝倉と批判的な意見をした視聴者は考え方に違いがあるが、いじめをなくしたい思いは一致している。こうした議論を積み重なることはいじめの抑止力の観点からも、大きな意味があるだろう。(梅宮昌宗)