友子さんが8歳の頃から母親は布教のために単身で海外を巡るようになり、妹は近くの信者宅に預けられていたので、食事はいつも一人だった。
「父はいつも仕事で帰りが遅く、食事は近所の信者の方たちがおすそ分けしてくれたものやスナック菓子で済ませていました。とても貧乏だったので、電話はよく止まっていたし、ガスもたまに止められていました。孤食だったので人との会話は全く無かったのですが実際にはテレビを点けて食べていました。」
小学3年生の頃から友子さんは、気が付くと誰かと食事をすることに苦痛を感じるようになったという。
「『会食恐怖症』のような状態だったんです。小学生の頃から人と一緒に食事ができなくて、咀嚼音を聞かれるのが嫌で給食も食べられませんでした。給食の時間が怖いので学校へ行くこと自体が苦痛になって、小学3年のころからずっと不登校でした」
「会食恐怖症」は人前でご飯を食べること(会食行為)に対して耐えがたい不安や恐怖を感じ、吐き気などの体調不良を引き起こす社交不安障害(SAD)の一つだが、友子さんもそれと似た状態だったという。学校給食などでの完食指導も発症の引き金となると言われているが、友子さんの場合は家庭での食習慣が大きな影響を与えていたようだ。
「教会ではお酒を飲んではいけない、喫煙もNG、異性と交遊をしてはいけない、そのような教えをたくさん受けました。また、毎週日曜日の朝5時から自宅でお祈りをする“式”にも参加しなければいけないのですが、小学生の子どもにとって朝5時から祈りをささげるのは辛いものでした。それに遅刻したり、サボったりすると父から素手で吐くまで殴られたほどです」
カルト2世は、親が信じる宗教を自分も信じなければいけない環境に生まれた子どものことをさす。もし親が信じる宗教に反発すれば、親の存在そのものを否定することにもなり、また条件付きであれ、親からの愛情も得られないケースもある。
友子さんが宗教から離れたのは約20年前のことだ。