「秀樹くんと組んでやりたいって言ったんです。普通は誰でも歌いやすい、覚えやすい曲を作るものですが、そのときだけは、秀樹じゃないと歌えないもの、難しくてもいいから高度なものにしようと思ったんです。そうしたら、やはり思ったとおりのフィーリングを出してくれた。単に歌がうまいだけの人ならいくらでもいますが、その理解力の高さは、天才的ミュージシャンでした。僕はもうそれで満足して、それ以来アニメの曲は書いてないんです」

 秀樹の人柄をこう語る。

「あれだけ人気があっても、非常に真面目でちっとも芸能人ぽくない。むしろそういう芸能界的なことを嫌うような人でした」

 一般女性と2001年に結婚、3人の子供にも恵まれた。

「芸能人らしくない、実にあたたかで、いい家庭を作りましたよね。どうして体こわしちゃったのかな。もう少し、生きてほしかった」

 秀樹が築いた幸せな家庭の根底には、「寺内貫太郎一家」で描かれた家族愛があったのではないだろうか。そう言うと、どこか本当の父親のような優しい表情で、うなずいていた。

「あったかもしれませんね。もしそうだとしたら、本当に素晴らしく、嬉しいことです」

(本誌・太田サトル)

週刊朝日 2019年5月31日号より抜粋