6月11日からG7サミット(主要7か国首脳会議)がイギリスで開催されました。新型コロナウイルスの感染拡大以降、各国の首脳が初めて対面で集まり、新型コロナウイルスによるパンデミックからの復興をテーマに集中的に議論したと報じられています。
その中で、日本政府の説明によると、菅総理は東京五輪開催への決意を述べ、参加国の首脳から「全員の賛意を代表して成功を確信している」という発言があったといいます。
One World in Dataによると、6月11日時点で、新型コロナウイルスワクチンを少なくとも1回の接種を終えた総人口の割合は、イギリスは60.53%、アメリカは51.66%、カナダは64.11%、ドイツは47.19%、フランスは44.18%、イタリアは47.22%であるのに対して、日本は12.6%です。菅総理は「安全安心の大会開催にむけて万全な感染対策を講じ、準備を進めている。強力な選手団を派遣してほしい」と呼びかけたと報じられていますが、G7の中でも世界的にも圧倒的に接種が遅れている日本が、万全な感染対策を講じていると言えるのかどうか、疑問を感じざるを得ません。
今年の4月14日、東京五輪の再考をすべきではないかという社説が、イギリス医師会雑誌(British Medical Journal)にて公開されたことは以前このコラムでご紹介しました。【日本は新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めていないこと、ワクチン接種の遅れや検査能力の限界は政治的なリーダーシップの欠如に起因していること、世界で新型コロナウイルスによるパンデミックを封じ込め、命を救う必要性があるにもかかわらず、国内の政治的・経済的な目的のために「東京2020」を開催することは、世界の健康と人間の安全保障に対する日本の責務と矛盾している】という内容でした。
6月12日には、イギリスの医学雑誌であるランセット(Lancet)で、今回の東京五輪開催の是非に関して世界保健機関(WHO)が沈黙していることに対して、責任逃れであるという社説が掲載されました。200カ国以上の国々から選手やジャーナリスト、ボランティアなど大会に関わる人たちにワクチン接種は必須ではなく、新たな変異体の発生を含め、新型コロナウイルス感染症の流行に悪影響を与える可能性があるほか、日本のワクチン接種が遅れていることなど、本当に開催できるのか、このまま開催すべきなのかと、疑問を投げかけると同時に。今一度、世界的な検討が必要でないかと問いかけています。
世界各国のあらゆる対策を参考にし、国内での感染対策に反映させていれば、世界でワクチン接種が始まった昨年末から日本でもワクチン接種を開始していれば、もっと前向きに東京五輪開催について議論できたのではないかと、残念に感じているのは私だけでしょうか。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員