タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【写真】ロシアの研究チームが「ヒルガタワムシ」を蘇らせることに成功した
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2万4千年前のシベリアの永久凍土から採取されたヒルガタワムシという微生物が解凍後に再び活動を始め、単為生殖も可能だったとロシアの科学者が発表しました。淡水に暮らすヒルガタワムシはもともと放射線などに非常に強い生き物として知られていたそうですが、2万4千年もの凍結を生き延びて増殖までしたとは!!
心配性の私は、そのヒルガタワムシに未知のウイルスが寄生していて、ラボから世界に拡散……とか、一緒に掘り出したすでに絶滅した病原性の微生物が蘇(よみがえ)って拡散……とか、つい不吉な予想をしてしまいます。今後は頻繁(ひんぱん)に未知の病原体との全世界的な闘いが起きるのかも。普段から国を超えた情報共有や迅速な対策実施を可能にする体制づくりを進めてほしいです。
どうせなら、爆速でプラスチックを分解する微生物や、放射性廃棄物を完全無害化する微生物が現れてくれたらいいのに。あるいは感染しても特段何の症状も表れないウイルスが世界中に広まり、知らぬ間にその遺伝子が組み込まれて人類に劇的な進化をもたらすとか。かつて卵生だった原始哺乳類の遺伝子にレトロウイルスの遺伝子が組み込まれたことにより、親が胎盤を使って子どもを胎内で育てられるようになったそうです。では今度は、それゆえにメスが何度も子宮から出血しなくてはならない、この実に非効率な「生理」という仕組みをぜひ不要にする進化を。求む、脱生理ウイルス!
いっそ胎生から卵生に戻るのも良いかもしれません。さらにコモドオオトカゲみたいに、メスが単為生殖できるようになるとかね。自分の卵子が精子の代わりをするのだそうです。ひとりでできるもん、です。その場合、生まれるのは全部オスだそうですよ。
素人の妄想は止まりません。凍土よ、永遠に冷たく安らかなれ。
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
※AERA 2021年6月21日号