他の理由で「円滑に家庭を回すには大ごとでない限り嘘もありだと思う」と書いてあり、それも、わかる~~~。そうです。円滑に回すためなんです。そのために大人は嘘をついてしまうのです。世の中の嘘は「いい嘘・悪い嘘」ではなく、「仕方ない嘘・ダメな嘘」だと思うのです。
と、長々と書いてきましたが、先日我が家庭で起きたこと。
僕は毎朝、お風呂に入ります。じゃないと目が覚めないからです。お風呂に入り、妻にたまに「お風呂洗ってきてくれた?」と言われます。朝、お風呂に入ったら、自分で洗ってくるのがルール。だけどね、急いでる朝の中で、忘れてしまう時が多いんです。急いでるなら風呂入るなと言われそうですが、入らないと目が覚めない。
もちろん洗う時もあるのですが、洗わずに出てきてしまう時がある。そして妻に「洗ってきた?」と聞かれた時に、ついつい嘘をついてしまう時がある。ただ、「ちゃんと洗ってきたよ」と言う嘘はつけず「軽く流してきた」という嘘をついてしまう。不思議なもので、120%のフスルイング嘘をその場ではつけない。
数日前、同じことが起きました。「洗ってきた?」と妻に聞かれ、僕は「軽く流してきた」と嘘をついてしまったのです。もちろん小さな罪悪感は胸の中にあります。
しかし、そのあと、妻が風呂に行くと「なんだよー」と叫んでいます。何事かと思ったら、なんと、僕は風呂のお湯を抜き忘れていたのです。大失敗です!!
朝風呂の為に昨日の夜からお湯を抜かずにためたままで、僕が入り、それを抜かずに出てきていた。なのに「軽く流した」と嘘をつく。
風呂のお湯を抜いてないことさえ忘れて嘘をつく。なんてダメ野郎なんでしょう。刑事ドラマだったら冒頭2分で解決。超つまらないドラマ。
このバレバレな嘘を、妻は怒ることなく、呆れて見逃してくれました。
だけどね、嘘をつきたくてついてるわけじゃない。怒らせたくない、円滑に進めたいという思いでついてしまう。だったらそもそも風呂を洗えという話なんですが、それがなぜか出来ない。
子供の頃の僕は、大人になってこんな嘘をつくなんて思ってなかったよなーと思いますが、日本全国の大人たちはどんな嘘を家庭でついているんでしょうか?
そして、コロナ禍になってからこれまで。政治家の方達が発言したことで、今振り返ると「あれ、嘘だったろ~」と思うことは少なくない気がする。
そんな方たちも、嘘つく時はドキドキしてるんであろうか。せめてドキドキはしていてほしいと願う。
■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中