妊活など2人目を意識した場合はどうか。例えば、35歳から不妊治療をスタートして38歳で授かった場合、ママたちにしてみれば、2人目の妊活をできるだけ早く始めたいという思いがある。
「中には授乳中に月経が再開する人もいますが、授乳を続けていると、月経が来ないケースが多いんです。プロラクチンという母乳分泌に関わるホルモンが排卵を抑制してしまうため、授乳中は月経が再開しづらいホルモン環境となります。不妊治療を再開するときには、排卵周期がスムーズになるようにホルモンバランスを整えるためにも、まずは授乳をやめて月経サイクルを元に戻す必要があります」
そして、少数ではあるが、授乳中のママに内臓疾患やがんなどの病気が見つかるケースもある。その場合は、ママの早期治療と体力の回復を優先し、断乳がすすめられる。
一方、ママはまだ母乳をあげたいのに、赤ちゃんが飲まなくなってしまうケースもある。そんなとき、ママは寂しさを感じてしまいがちだが、おっぱいを飲まなくなった子にもう一度飲ませようとするのは難しい。飲まなくなったのはわが子の成長の証だと受け止めよう。
逆に、遅くなった場合に問題はないのだろうか。中嶋さんによると、ママ自身が母子のコミュニケーションとして授乳を大切にしていて、子どももおっぱいが大好きならば、2、3歳以降も授乳を続けるのは悪いことではないという。ただ、子ども同士の世界でコミュニケーションをとるようになると、「おっぱいを飲んでいることを、友だちに知られたくない」など、子ども心に羞恥心や葛藤が芽生えることもある。
「口腔外科の先生によれば、『虫歯や歯並びなどの観点から、1~2歳以降の授乳はあまりおすすめしない』という意見がほとんどです。ママとしては『授乳をやめるのが名残惜しい』という気持ちがあるかもしれませんが、子どものほうから飲まなくなったら、親子で一緒に卒業することが大切です。卒業する日が来るのを、ママ自身が受け入れることも必要です」
中嶋 彩(なかじま・あや)/産前産後ケアセンター 東峯サライ副センター長、東峯婦人クリニック助産師。母乳育児や卒乳に関わる相談はもちろん、産前産後のママと赤ちゃんのケアを担当している。
(取材・文/スローマリッジ取材班 大石久恵)