「私どもの力量では指摘事項を100%修正することは困難です」

 と回答するのです。仕事において、相手に満足度100%で応えようとする姿勢は素晴らしいものの、得るべき対価との見合いで仕事は行うべきです。

「十分に対価に見合った仕事はしている」と納得できるのであれば、ギブアップすることも視野に入れる必要があります。

 ただし、相手先が強烈に力を持っているケースなど、理不尽でもやらざるを得ない状況に陥ることがあります。これまでの取引実績や、今後の関係を広げたい重要性の高い取引先であれば依頼内容に無理があっても応えなければなりません。

 そんなときには、自分の納得感が重要と考えます。

 作業をするのが自分であれば、その理不尽の先に大きな金額が見込めたり、自分の成長につながると感じられたり、そういった意味づけを行いながら自分を納得させていきます。

 ポイントは、一人で抱え込まないこと。

 きちんと周囲に「あの理不尽な相手のためにこんな無茶な要求にも応えている」ということをアピールするのです。すると、助けてくれる人が現れたり、苦労も厭わない人材だと将来の評価につながったりするものです。

 もし仮に「自分ではこれ以上対処できない」と限界を感じることがあれば、断る覚悟を持つべきでしょう。というのも、それまで無茶を言っていた相手先も、断る姿勢を見せると「ならば可能な範囲でお願いします」という態度になる場合がよくあるからです。

 几帳面で細かすぎる人は、とにかく面倒くさい指摘をしてきますが、自分の心身を守るためにも、

「100%回答しなければならない」
「自分が間違っていて、相手が100%正しい」

 という思い込みを捨てることが必要です。

西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。

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