
石川慶監督の新作映画「Arc アーク」は、ケン・リュウの短編小説『円弧』を原作にした、近未来が舞台の物語だ。人類初の永遠の命を得た女性・リナを芳根京子が演じた。AERA 2021年6月21日号から。
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――映画「Arc アーク」で芳根京子が演じたのは、30歳の身体のまま生き続けるリナだ。だが芳根は、オファーを受けた当初、出演を躊躇したという。
芳根:脚本を読んですごく面白くて、どういう映像になるんだろうとワクワクしたんですけど、ひとりの女性の17歳から100歳以上を演じるには経験値が少なくて、納得してもらえるお芝居ができる自信がないと思ったんです。石川監督とは、以前ドラマ「イノセント・デイズ」でご一緒して、またご一緒したいと思ってたので「こんなに早く夢が叶うんだ!」という喜びはあったんですけど、それを超えられない葛藤があったので、直接お話しさせてもらいました。
石川:僕は芳根さんからのメールを見て、完全に振られたと思いました(笑)。今いくつになられたんでしたっけ?
芳根:この前24になりました。
■伸びしろが半端ない
石川:毎回、年齢を聞きたくなるぐらい、「どこまで行くんだろう」という伸びしろがある方だと思っています。リナのキャスティングには、二つ方向性があったんです。芳根さんぐらいの年齢もしくはもっと下の方をキャスティングする方向性と、30代前半の方をキャスティングしてリナが若い時のお芝居はちょっと頑張ってもらうという方向性。30歳ぐらいの経験のある女優さんを頭の中でキャスティングした時に、ハマる女優さんはいっぱいいらっしゃったんですけど、見えすぎてしまう感じがして、誰も見たことない話を作ろうとしているので、それはマイナスではないかと。でも、若い女優さんに任せるのも不安だと思った時に、「そうだ、ポテンシャルが半端ない人がいた」と(笑)、芳根さんが浮かびました。どうなるか見えないから、芳根さんが良いという。それでお会いした際に、説得したんですね。
――見た目は変わらないが、中身は確実に年を重ねていくという人物を演じてもらう。監督自身も作品がどう転がっていくか想像できなかったという。
芳根:撮影前は、いろいろ考えても答えがなくて何も始まらない感じがしたんです。これはもう現場で作っていく方が良いんじゃないかなと。いざ現場に入ってみたら、どんどん世界が広がった感じがしました。監督と役者さんがぶつかり合うことで作り上げていく作品もありますが、今回は石川監督と足を結ばれて二人三脚をしているかのように一緒に歩いている感じがして、心地よかったですね。