正確ではないがこんなニュアンスでのハラハラが伝わる回答。きっと、この先生の周りには厳しめのフェミニストがいるのだと察し、大笑いしながらを撫でていた。

 そんなふうにラジオを聴く時間を私は気に入っていたのだ。古いラジオで聴いているのでザラザラとした感触のある音も好みなのだ。メディアからの一方的暴力を受けないで済む安全地帯のはずだったのだ。なのに……あまかったですね。ここは日本なんですけど!? と頬をたたかれたような気分だ。

 これまでの人生でも、居酒屋などでたまたま隣に座った男性たちが買春をネタにゲラゲラと汚い笑いで盛り上がるのを耐えるようなことは何度もあった。そういうことを「笑う」習性のある人たちが少なくない国であることは十分知っているのだ。男性が女性の「幼さ」「可愛さ」を商品として設定し、金銭を介することで平等な取引をしているような錯覚をする性搾取文化が、なぜかジョークになってしまう社会なのだ。でも、居酒屋で聞くのと、家で公共電波で突然聞かされるのでは、衝撃が違う。

 あまりに衝撃だったのでラジオディレクターの友人に、こんなことをNHKで言ってたと抗議のように伝えると、「そういうの、今はフツー。ラジオも男社会で、一般受けする楽しいものをつくろうとすると、エロを入れたがるんだよね」と今さら何を驚いているの? という調子で返されたのだった。

 安全安心なオリンピックを!と政府は繰り返し言っている。安全安心の安売りが心配だ。もう既にこの社会は女にとって安全安心ではなくなっているのかもしれない。安全安心が繰り返されるたびに、危機感と不安が募る不思議。NHKラジオも、あれから怖くてつけていない。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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