いまの世の中には女性差別などジェンダーの問題、在日外国人差別など民族や人種の問題、経済格差による貧困など、解決しなければならないテーマがたくさんあります。権威主義的な風潮、家父長的な抑圧によるものといっていい。こうした不条理、いうなれば不平等、不公平に抗っていく姿を描きたかったのです。高校生という若さ、友情や連帯をもって、不条理な世界を怒りやユーモアで冒涜する、そんなエンターテインメントを目指しました。
―――大麻をテーマに選んだのはどのような理由からでしょうか。
ぼく自身、大麻になにか思い入れがあって書いたわけではありません。高校生がやろうとして、実際にやれてしまってもおかしくないことはなにかなと考え、そこで大麻を選びました。作中では大麻について肯定も否定もしない感じで表現しました。大麻の栽培について重要なところはその都度、調べました。やや誇張しているところもありますが、そこはご愛敬ですね。
―――身近なところでヤンキーと出会っていたのでしょうか。
典型的なヤンキーは絶滅危惧種となっており、まわりにはあまりいませんでした。ヤンキーでもなく、品行方正でもない高校生はよく見かけました。タバコを吸う姿はよく見かけましたね。『万事快調』ではリアルタイムで見聞きした高校生が生かされています。ぼく自身、地元で社会や将来に対する不満、不安を抱いていました。幼い頃から何も変化がない地元から出てやる、そんな思いを抱いており、作品にぶつけたところもあります。
―――波木さんは受賞後のエッセイ(「オール読物」2021年6月号)で、映画『万引き家族』『パラサイト 半地下の家族』を「不平等を強いられたプレーヤーたちが、ある種の反則をもってしてでもカードを力づくで奪いにいく」話であり、それは「いまの世の中に必要とされている」と書かれています。『万事快調』もこれに連なる作品と位置づけています。作品を書く上で、心がけていたことはありますか。