めまいを引き起こす病気として知られているのが、ストレスが原因で起こる「メニエール病」や、脳卒中だ。それぞれに特有の症状があり、治療法も異なる。治療のあともめまいが慢性化することがあり、注意が必要だ。
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めまいのなかでも、耳の病気により起こる「末梢性めまい」の原因としてよく知られるのが「メニエール病」だ。
メニエール病は、内耳にある三半規管や耳石器、蝸牛などの器官を満たしている内リンパが過剰に増えることで、内耳がむくんだ状態(内リンパ水腫)になる病気。東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科教授の鈴木光也医師はこう話す。
「内リンパ水腫の原因には諸説ありますが、大きな要因といわれるのがストレスです。睡眠不足や食事などの生活習慣も関係するといわれます」
この病気では、回転性のめまいが数十分から数時間続き、難聴や耳鳴り、耳が詰まる感じ(耳閉感)などの聴覚症状を伴うことが多い。めまいの発作は繰り返し起こるが、頻度は人により異なる。症状を「繰り返すこと」がメニエール病の診断基準のひとつであるため、初回の受診で診断されることはなく、症状の経過をみながら診断していく。
「メニエール病は、めまい発作を繰り返すたびに治りにくくなり、難聴が進んでいく傾向があります。そのため、なるべく早い段階で適切な治療をすることが大切です。ストレスや生活習慣などの原因を取り除くことも必要です」(鈴木医師)
■運動療法により予防効果も
メニエール病の治療では、めまいや吐き気などの症状が強い急性期には安静にし、内耳の血液循環をよくする「抗めまい薬」や、炎症を抑える「ステロイド薬」、吐き気止めや抗不安薬などによる薬物療法をおこなう。症状が落ち着いたら、内耳のむくみをとるための利尿薬などを投与して経過をみることが多い。
薬物療法で改善しない場合の保存療法として、「中耳加圧療法」が2018年に保険適用となった。この治療法では、耳の奥に圧力をかけ、内リンパの排出をうながすことで内耳のむくみを解消し、めまいの改善を図る。