同大キャリアセンター部長の紀國洋(きのくにひろし)さんは言う。
「予算だけでなく、キャリアセンター職員の派遣や卒業生の招へいができるようになったことで、キャリアプログラムが学部主導になるなど就活支援の垣根が低くなりました」
授業の伝え方にも変化が起きた。これまでは、授業と就活は切り分けて考えられることも多かったが、
「学問をただ伝えるのではなく、それが将来につながるように語りかける教員が増えました。たとえば、研究内容は専門外の人にもわかりやすく伝える必要がある。そのスキルは就活はもちろん、社会人になってからも役立つもの。学生の就活への向き合い方も違ってくるんです」
と紀國さん。学生が納得感をもって就活に挑める環境づくりが躍進の大きなカギになる。
こぞって「近大」の名前
取材を進めるなかで、大学関係者から一目置かれた大学があった。“マグロ大学”の愛称で親しまれている近畿大学だ。
8年連続で志願者数1位。そして、400社への就職者数の伸び率も1位。その成長度は、他大の関係者をして幾度となく「近大」の名が挙げられるほど注目されている。
だが、近大は手放しで数字を喜ぶ姿は見せない。
「伸び率が増えていることはうれしいですが、率で見るほどまだ大きくはありません」
そう言い切るのは、同大東京センター事務部長の加藤公代さんだ。近大マグロや入学式など、数々のPRを手掛けた加藤さんは今春、同センターに着任した。
「10年以上、大学の価値やブランド力を上げる取り組みをするなかで優秀な学生も増え、それが400社への就職にもつながっています。ただもっと力を入れていかないといけない。400社には東京を拠点にする企業も多く、そこへのアプローチを一層強化することが大学としての目標です」(加藤さん)
大学通信の安田賢治常務も、こう指摘する。
「大事なのは、400社への就職者数よりもどの企業に行ったかです。特定企業や業界にたくさん就職するより、いろいろなところにまんべんなく受かるほうがいい。早慶の就職者数と比べて少ない企業は、その大学にとっての『伸びしろ』と考えていいでしょう」