林:へ~え。
桜木:でも、林さんのご主人だって、ご主人のやり方で協力されてるんじゃないですか?
林:いやいや、たまに車で送ってくれるぐらい。
桜木:ご結婚されてからの作品は、結婚しないと書けなかったこともいっぱいありますよね。
林:ああ、そうですね。「結婚生活って続けるもんだな。我慢してきたかいがあった」と思うことはありますよ、ときには。
桜木:私も、結婚生活を続けるかいはあったなあ、と思います。家族を持つと取材しなくても書けることが増えますし。でも、林さんのお話、どこまで信じていいんだろう。おもしろくなるように、つくってないですか?
林:ぜんぜんつくってないですよ。
桜木:私、まだ疑ってますよ、「林真理子」を演じているのではないかと(笑)。私も実は、最近夫がネタになりつつあるんです。彼がリタイア人になってから初めて四六時中ずっと一緒にいるようになって、気づくことが増えたというか。私は「ああ、この人はこういう人だったんだ」と改めて知ることもあるし、夫は夫で「女房は家でこういうことをしてたのか」と思ってるんだろうな、と。
林:なるほど。
桜木:更年期も終わり、自分の体調で手いっぱいで、べつに男と女でなくてもいいやという環境になったら、すごくラクになりました。林さんの場合、ご主人から愛されているから、ネタにできているのかな、と思ってます。
林:愛されてなんかいませんよ。怒られてばっかりです。
桜木:怒っていい環境を常に用意してくれる女房って、すごくいい女房なんじゃないですか? 言い返して取っ組み合いのケンカをすることもないんですよね?
林:私、言い返さないもん。
桜木:なんか、すごくうまくいってる夫婦の話を聞いてるような気もするな(笑)。やっぱりちょっと盛ってるんじゃ……。
林:盛ってないってば(笑)。ところで、女性作家で、夫を取り換えたり「いらない」って捨てちゃう人、案外いるでしょう。すごいなあと思いますよ。
桜木:私たち、取り換えない二人ですよね。私は夫と別れても、おそらく彼と似たような男を好きになっちゃうと思う。百パーセント好みなんで。