林:そう。私たち、振り込まれて初めて「ああ、いくらか」ってわかる。原稿料を上げてくれるところもあるし、何年やっても上げてくれないところもあるし……。お子さんたち、お母さんの本を読んで感想を言ったりするんですか。
桜木:息子は読まないです。でも、娘は中学校時代からずっと私のゲラの最終チェックをしてきたんです。バイト代5千円払って。「これ、二つに分けたほうがいいんじゃない?」という文章が一冊につき三つぐらい見つかると、ああ、よかったって思います。校閲さんの手が入ったものを、学生が見る機会はなかなかないから、経験の一つとして見せていたら、文章を書くのに困らない子になりました。
林:うちの娘なんて、本一冊も読まないですよ。新聞も読まない。
桜木:そうそう、今日はこれを聞かなきゃと思って来たんですが、林さんがご主人について書いてること、本当なんですか?
林:もっとひどいですよ、もう。
桜木:そのへん、ちょっと聞いてみたかったんです。うちの夫が本当はどう思っているのかよくわからないから。
林:桜木さんは旦那さんと仲良しだって公言されてますよね。たとえば奥さんの成功だとか、奥さんが忙しくなるとかいうのも、ご主人は快く受け入れてるんですか。
桜木:……セイコウ? えっと……セイコウですか?
林:サクセス。
桜木:あ、そっちのセイコウね。私、官能出身だから。アハハハ。
林:この話の流れで、なんでそのセイコウに行くわけ?(笑)。北海道の小さな町で、「ほら、あの人が桜木紫乃さんの旦那さんよ」とか言われると思うけど、そういうプレッシャーはちゃんと乗り越えられたのかな、と。
桜木:役所勤めという狭い社会にいたので、イヤなことはいろいろあったと思うけど、「僕は大丈夫、大丈夫」って。でも、女房にも生活力があるということを彼が受け入れて、私の下着まで洗ってくれるようになるまで、少しかかりましたね。
林:下着、洗ってくれるんだ。
桜木:昼夜兼用のごはんもつくってくれるんです。