司会を務める田原総一朗はもともとテレビマンだった。彼は、自分の役割はスムーズに議論を進めることではなく、番組を盛り上げることであると考えていた。そのため、彼はあえて強引に話をさえぎったり、対立をあおったり、威圧的に振る舞ったりすることで、出演者の生の感情を引き出そうとした。

 その結果、『朝生』の現場では論客たちが感情をむき出しにて、互いを罵り合ったりするようになった。討論の場という体裁で、実際には感情をぶつけ合う血で血を洗う戦いが繰り広げられていた。視聴者もそれを楽しんでいた。

 だが、そのような討論スタイルは今の時代には合っていない。特に、若者たちの多くは、感情的になること自体に嫌悪感を持っていて、人が怒ったり怒鳴ったりするところを自分から見ようとは思わない。お笑いの世界でも、昨今は暴力的な激しいツッコミや容姿イジりが敬遠され、「優しい笑い」が求められるようになっている。

 ひろゆきは、そんな時代に満を持して現れた正統派の論客タレントである。彼はひょうひょうとした態度で感情を表に出さず、冷静に相手の話を聞き、矛盾点を指摘したり、違う角度から問題に切り込んだりしてみせる。

 そんな彼が現実離れした論理を弄んでいるだけだという印象を与えないのは、理屈の裏付けとなる知識も豊富に持っているからだ。インターネット文化に精通しており、それ以外の分野でも幅広い知識があるため、さまざまな社会問題に対して自分なりの視点で物を言うことができる。

 新型コロナの影響で、テレビの収録では出演者の数が減り、リモート撮影も増えてきた。ひろゆきはフランス在住で、もともとほとんどの番組にリモートで出演していたため、コロナ禍の影響を受けなかった。

 また、リモートの収録ではテンポの速い会話ができないため、一人一人の話をじっくり聞くことになる。ひろゆきは感情的にならず、時間をかけて丁寧に理屈を追っていくような話ができる。それも今の時代に合っている。

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