「リトリーバル」とは、100年以上もの研究の積み重ねで、高い効果が確認されてきた勉強法です。脳に何らかの形で記憶されたものを、ノートや教科書を見直して答えを探すのではなくて、自分の頭だけを使って記憶を取り出すことを言います。
「テスト」はまさに自分の頭だけで学んだことを思い出す、「リトリーバル」。よって、記憶を定着する方法として非常に有効です。
この方法は普段の勉強にも取り入れると学習効果がグンとアップします。例えば、覚えたことを復習するときに、教科書やノートを見直しする人が多いと思いますが、実は目で字面を追っているだけで、「やった気になっている」だけのことがあります。対してノートや教科書を開かず、頭の中の記憶をたどって答えを思いだそうとするのはとても地味で時間がかかり、辛い作業ですが、「やった気になっている」だけの復習よりはるかに効果的なのです。
3.他人との「コラボ学習」でドーパミンがドバッと出る
そもそも私たちはわからないことが理解できたり、難しいスキルをマスターしたりすると、嬉しかったり、スカッとした気分になります。このような状況になると、快楽物質であるドーパミンが分泌されて報酬系が活性化されることがわかっています。その他にも学びで快楽物質を出す方法があります。
それは、「他人とのコラボ」です。
他の人たちと話をしたり、協力をして何かを成し遂げようとしたりなど、広い意味で「コラボ」しようとしたときに、ドーパミンが分泌されることがわかっています。つまり、グループワークやディスカッションなどは、学習効果の高い勉強法です。
もちろん、全ての勉強をコラボ学習にするのは難しいかもしれませんが、実際に他の人たちとやりとりをしなくても、勉強をする際に他の人を思い浮かべたり、他の人とのやりとりを想定するだけでも学習効果が上がることが確認されています。さらに、ドーパミンは記憶力をアップさせることもわかっています。「コラボの気持ちよさ」は脳の学びをあらゆる方面から助けてくれるのです。
◎星友啓(ほし・ともひろ)/スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長。哲学博士。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、スタンフォード大学哲学博士を終了。2016年より現職。新刊発売を記念して7月18日(日)にオンラインセミナー開催。