共産党の志位和夫委員長
共産党の志位和夫委員長

 角谷氏が注目したのは、立憲の枝野幸男前代表が10月28日、自らのユーチューブチャンネルで「去年の総選挙で時限的とはいえ消費税減税を言ったことは間違いだったと反省している」と突然発言し、党内からも困惑の声があがった一件だ。

「あれは、ある種の自民党へのシグナルだと感じました。枝野氏だけでなく、野田佳彦氏、安住氏といった旧民主党時代からのキーマンは財務省と近い財政規律派。立憲にとっては、与党にとって難しい増税の話を立憲の賛同でまとめさせる見返りに、政権の中に大臣や副大臣、政務官を入れ、政権運営の経験を積むことができる。ただし、さすがに選挙の調整まではできないので、連立は次期衆院選までの限定的なものになるはずです」(同)

 現在の勢力図から考えると“ウルトラC”的な地殻変動となるが、泉健太代表になってからも一向に浮上のきっかけをつかめない立憲の中では議員らの不満はくすぶっており、そのマグマの行方次第では、こうした動きが現実化しても不思議ではない。

「党内には、小沢一郎氏など、増税への抵抗が強い勢力も少なからずいます。かつて民主党が割れた原因も増税でした。今回も、増税賛成の右派と増税反対の左派で分裂するのではないか。右派の代表は首相経験者の野田氏で、そこに国民民主党や維新の一部も合流し、自民との大連立に動く」(同)

 とはいえ、衆院選がない限り数は十分足りている与党がなぜ、立憲と組むのか。角谷氏の分析はこうだ。

岸田首相にとっては、首相経験者の麻生太郎副総裁と菅義偉氏、二階元幹事長、森山前国対委員長という“ご意見番”4人のご機嫌をうかがいながら政権を運営するのがしんどくなっている。立憲と組んで公明と3党の連立調整を優先する体制になれば、ご意見番の声は後回しにできる」

 いずれにせよ、23年は岸田首相にとって正念場の年となることは間違いない。そうなると、やはり気になるのは「ポスト岸田」が誰になるかだ。

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