■我慢することが首相の長期戦略
それでも、党内外に自分を追い落とす“ライバル”がいない状況に、岸田首相は強気を維持しているという観測も根強い。首相周辺はこう語る。
「岸田首相の長期戦略は、どう非難されようが、とにかくじっと我慢すること。G7サミットを議長国として取り仕切って支持率アップにつなげ、様子を見ながら解散。総選挙を最小ダメージで乗り切って、24年秋の総裁選を事実上の無投票に持ち込み、2期6年の長期政権を頭に描いている」
だが、果たしてそんな甘いシナリオを国民が許容するだろうか。本誌は10増10減の新区割りで行われる次期衆院選について、政治ジャーナリストの野上忠興氏、角谷浩一氏に選挙予測を依頼した。自民党は、野上氏は最大で79議席減、角谷氏は81議席減の大惨敗という衝撃的な数字が出た。与党全体では90議席減に迫る勢いだ。今回は不確定要素も多いため幅をもった予測になっているが、中央の値で見ても、両者とも衆院の過半数である233議席を割るか割らないかという、厳しい予測になっている。
野上氏は、12月11日に投開票され統一地方選の前哨戦と言われた茨城県議選で自民党県連幹事長を含む現職10人が落選した結果などから、「今や自民党というブランドは地に落ちた」と語る。
「今回は旧統一教会票が期待できないのに加え、頼りにしてきた創価学会票も組織の高齢化などにより目に見えて集票力が落ちている。過去、大差で勝ってきた候補者もそう簡単に勝てなくなった。そんな中で、増税問題も決着せず、来年度に持ち越し。今や岸田離れは顕著で、自公の過半数割れが現実味を帯びてきました。自民党にとってはかつてないきつい選挙になる。衆参のねじれが起きれば、岸田首相は当然、辞任でしょう」(野上氏)
野上氏が算出したデータによると、自民党には前回衆院選で次点との差が1万票未満で当選した議員が33人、2万票未満で当選した議員が57人もいる。そうした接戦区で旧統一教会などからの「組織票」や選挙支援を失えば、落選者が続出しかねない。