画面がフリーズする、まったく作動しないなど、映画や音楽を楽しみにしていらっしゃるお客様にとっては、不満が募る状況が頻繁に起こっていました。故障は一気に起こります。一斉にコールボタンが押され、あちこちでクレームが噴出します。

 そんな時、CAは連携してお客様対応にあたるのですが、その先輩は我関せず知らん顔。他のCAがお客様にクレームされ、個人用テレビを回復させるために必死で駆けずり回っているときにも一人優雅に食事をしています。最後まで非協力的な態度で、クレーム処理はチーフの仕事だとばかりに手助けもせず、注意をしても、返事はするものの、指示通りには動いてくれません。

 同僚のCAには私の悪口を言う、私の上司には私についての告げ口するなど、やりたい放題です。さすがに精神的にも疲れ果てることが多かったのですが、相手を変えることは簡単にはできません。

■上司の職権を使うのではなく、平然とやるべきことに集中する

 上司だからと言って、職権を使いその場で言うことを聞かせたとしてもそれはその場しのぎです。職権を乱用すると部下との関係性はますますこじれていくばかりです。

 反抗する先輩の部下に対しては、ムキになったり感情をあらわにはせず、やるべきことに集中して、平然と振る舞うよう努めました。つらいことではありますが、その姿勢を貫くとまわりが味方してくれるようになるのです。そんな経験を重ねていくと、自然とメンタルは鍛えられていきます。

 多かれ少なかれCAは職場の人間関係にもまれ、お客様に気を遣い、気持ちが凹む経験を数多くしています。そういった環境に耐えられなくて早々に別の道に進む人も多いですが、実はCAの離職率は高くありません。精神的にも身体的にも過酷な職場ではありますが、長く勤める人が多いのです。

 それは、少しずつメンタルが鍛えられることによって、人間関係も仕事も、人生にも自信が持てるようになるからかもしれません。少しのことでいつまでも思い悩んでいることが無意味に思えるようになるのです。

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打たれ強いメンタルは「ビジネススキル」だ